みなさんは普段、どんなイスに座っていますか?
「何を突然???」と思うかもしれませんが、先日木のイスに座ったところ、とてもほっこりしたんです。いつも座っているイス(木製ではない)にはちょっとしたクッションがついていて、それより固くて座り心地が良いとは言えないイスなのに、何でこんなあたたかい気持ちになるんだろう???。木に対してそんな印象を持ったこと、ありませんか?
木の持つ不思议なチカラ。私たちが木に感じる心地良さ。
それをいろいろな侧面から研究している研究室があります。今回はそこで、木材工学研究の面白さを教えてもらいました!
今回ご绍介する研究室はコチラ!
農学研究科 森林科学専攻 生物材料工学講座 生物材料设计学研究室
この研究室では、木材の利用に関する研究を行っています。デザイン、形状、木目などの见た目が人に与える影响(なぜそれを良く感じるか)を、脳波や画像解析により调べるソフト面での研究と、强度や热処理を加えたときの変化など、木材の持つ物性を调べる物理学的研究、両方の侧面があります。
早速研究室にお邪魔します。场所は北部构内の农学部総合馆。
おお~!さすが木材の研究をしているだけあって、研究室の家具も木製!农学部ができた顷からある、年季の入った机。
片隅にあるギターがめちゃくちゃ気になるのですが。
「このギター、普通のギターとは违うんです!」???こ、この声は!?
ギターの主、村田功二 農学研究科講師と修士課程2回生の前川遥樹さん。
现在取り组んでいる研究と、このギターについて、详しく伺います!
蚕.お二人はどんな研究をされているんですか?
村田先生 :「今、【広叶树】に着目しています!広叶树とは何か、ご存知ですか?」
広报贬 :「えぇっと、昔学校で习いましたけど???(説明できない)」
村田先生 :「木にはトゲトゲした叶の针叶树(例:スギ、ヒノキ)と、扁平な叶の広叶树(例:サクラ、ケヤキ、ブナ)があるのはご存知ですよね。针叶树の方が昔から存在しているのですが、种类は広叶树の方が多いんです。また、针叶树の构造はいたってシンプル。広叶树の构造はバラエティに富んでいて木によって全然违うので、そこが面白いんです。」
京大のシンボル、クスノキは広叶树です。
前川さん :「僕は【楽器】、中でもエレキギターに注目しました。エレキギターは比较的新しい楽器なので、関连する研究がまだほとんどないんです。アコースティックギターは中の空洞で弦の振动を増幅させるので、构造が音に大きく影响してきますが、エレキギターには空洞がないので、その分使う木材で変化をつけられる???だからこそ面白い!と感じました。」
村田先生 :「でも问题があって、楽器に使われる木材は海外の希少な树种で、絶灭の危机に濒しているんです。代わりに、 国产広叶树を使えないか? と考えました。今、「早生树」といって、早期成长と多収穫が可能な木を植える取组みが进んでいて、私の研究テーマでもあります。これまで国产広叶树は楽器用木材としては使われてこなかったんですが、安定した资源量、 サステナビリティ(持続可能性) 、トレーサビリティ(追跡可能性)の観点から、検讨してみる必要があると思いました。」
広报贬 :「ということは、もしかしてこのギター、国产広叶树で作られたギター????」
村田先生 :「そのとおり!私たちの研究テーマがマッチして生まれたギターなんです。」
★北海道产シラカバを用いたギターを製作!
村田先生と前川さんは、国产広叶树のシラカンバ(シラカバ)、ダケカンバ、センダンの音响特性を六つの観点から评価し、従来ソリッドギター(空洞を持たない一枚板构造のギター)で使われてきた希少な木材と比较しました。
その结果、シラカンバとダケカンバが、ハードメイプルという楽器用木材に近い性质を持つことが判明!さらに热処理を加えることで音が改善され、これまで纸?パルプ用チップとして利用されてきたカンバ材が、楽器用木材としても活用できる可能性を见いだしました。
▼详しい研究成果についてはコチラ!
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/170406_1.html
蚕.研究で苦労することはありますか?
前川さん :「楽器って、评価が难しいんです。「良い音」=「聴き手が気持ち良く聴ける音」なんですが、それは人によって违いますし、谁と聴くのか、どこで聴くのかなどにも左右されます。物性だけで善し悪しを决められないのが难しいところです。」
村田先生 :「だから私たちは、このシラカバ製ギターが良い楽器だとは言ってないんです。それは聴き手が决めるコト。あくまで、音响特性がハードメイプルに似ているかどうかということにしか触れていません。あと、予算が苦しい???(笑)。でも幸いなことに、ギター製作に兴味を持ってくださる方が多く、その方々に随分と助けられました。见学に行った工房の方がギターを製作してくださり、プロによる试奏会も実现したんですよ。」
楽器があまりにも难しいテーマなので、前川さんの学部卒业课题はこのジョイント部分に関连するテーマに绞りました。ピンポイント!「でもここも面白いパーツなんですよ~。」(产测村田先生)
工房で加工途中のボディ。ちなみに设计はミリ単位で前川さんが行ったそう!爱情込めて作られたギターです。
蚕.研究のマストアイテム、教えてください!
前川さん :「この研究では木材の振动性を调べるため、「叁种の神器」を使ってます(笑)。」
何コレちっちゃい!「「加速度ピックアップ」といって、木材に固定し内部のセンサーで振动を検出します。」(产测前川さん)
振动を起こすために使うのが「インパクトハンマー」。加速度ピックアップの中にあるのと同じセンサーが入っています。どういう振动を与えるかも大事なので、あわせて计测。
収集したデータを保存する「収録モジュール」。パソコンにつないで使います。
蚕.実験している様子を见てみたいんですが???
という広报贬のお願いにも快く応じてくださり、実験室を見せてもらうことに!
前川さんの実験スペースはこちら!工房みたいですね~。
このように台に木材を置き、加速度ピックアップを固定。
インパクトハンマーで、下から1回木材を叩きます。これ、简単そうに见えてかなりコツがいるんです!
前川さん :「自分では1回しか叩いていないつもりでも、2、3回は振动が加わっているんですよね???。练习を重ねてだんだんうまく叩けるようになりました。」
広报贬 :「実験には、人间の熟练した技も必要なんですね???。」
この板1枚で、ギターのボディを作れます!叁井物产株式会社の社有林では持続可能な森林経営をしており、そこからとれた家具用材で余ったものを提供してもらっているそう。
よーく见るとつぎはぎの跡が。シラカンバはあまり大きくならないので、このように复数の板を接合して使うことがよくあるそう。北海道立総合研究机构林产试験场ではカンバ材利用の研究をしており、そこで接合接着してもらったそうです。
このオーブンのような机械で、木材に热処理を加えます。
★実験室にはお宝(?)がザクザク!
背よりも高い、巨大な木板を発见。これは元々教授の部屋にあったもので、吉野杉で作られているそう。一体何に使うのかは分かりませんが、とにかく譲れない宝物。
前川さんの懐かしき卒业课题のなごりが!ネジで接合した部分によって振动がどう変わるか実験したもの。
ザクザク出てきたのは???木材チップ!「ギターで使う木材がトロだったら、こっちはアラ。」(产测村田先生)アラもおいしくいただき(=活用し)ます。
蚕.今后やってみたいことは??
前川さん :「今回使ったシラカンバはハードメイプルに似ていて、ヘビーメタル向けの重い音が出ます。次はマホガニーに近いセンダンなど别の木を使って、やわらかい音を出すギターを作れたら良いですね。」
「よいしょっと。」ここで村田先生が突然持って来たのは???シカの角!?
祇园祭のお囃子(おはやし)で演奏される楽器には、シカの角が使われているんだそう。结构固いです!
「弦を支えるナットという部分にこれを使えないかと考えてます。」(产测村田先生)部品一つ変えるだけで、音が大きく変わりそうですね!
村田先生 :「これをキッカケに、国产広叶树、早生树の利用を促进できたら良いなと思います。使える木はたくさんあるのに伐採する人手が足りない、土地はあるのに使える木がないなどの问题があり、今、「森の再生」が重要な课题となっています。过疎地域に产业ができれば、人が集まってくる。农林业、木材の活用をとおして地域に利益が还元される???そんな 地域创生 の仕组み作りに贡献することが、最终的な目标です。」
「自分で设计して言うのも何ですけど???やっぱり良い音ですね。」と照れながら语る前川さんと、
一绪に楽しんで研究されている村田先生の様子が、印象的でした。
面白い研究の里には、こんな思いがあったんですね???。木材の利活用が、地域社会の课题を解决することにつながると知りました。
木製のイスを见たら、「この木はどこから来たんだろう????」と思いを驰せてみるのも、良いかもしれませんね。
取材にご协力いただいた村田先生、前川さん、研究室のみなさん、ありがとうございました!
突然ですが???
2012年11月から始まり、约4年半続いてきた「実は!」、今号が最终号となりました。
学内でもあまり知られていない京大のナゾ、魅力を毎月掘り起こし、広报担当も「へぇ~!」と惊きと感动の连続。みなさんと同じ目线で京大を见つめ、学び、爱してきました。
しかし、これで终わりではありません!スペシャルサイト にて、引き続き知られざる京大の魅力をお伝えしていきます。マメに更新予定ですので、ぜひ游びに来てください!
长らく「実は!」をご爱読いただいたみなさん、ありがとうございました。そしてこれからも、どうぞよろしくお愿いします。
関连リンク
- 京都大学大学院 農学研究科 森林科学専攻 生物材料工学講座 生物材料設計学分野
研究室ホームページ
- シラカバギターの演奏
2017年4月22日に、ジャズライブバー心斎桥コンテローゼで、プロギタリストの山口武さんによる试奏会が行われました!
(Autumn leaves)
(Stinking Story)
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