尾池 和夫

皆さんお早うございます。
最初に、ここにおられる25名の皆さんが、これからの人生をつぎ込んで仕事する职场として、この京都大学を选んでくださったことに、京都大学を代表してお礼を申し上げます。そして同时に、これから皆さんと一绪になって、わたしたちもこの京都大学を、真に教育と研究と医疗に代表される社会贡献の、世界に夸ることのできる场として、発展させていくことを、しっかりと共通の目标として认识したいと思います。
また、京都大学という職場は、きっと皆さんにとって働きがいのある職場であると思います。京都大学は世界に開かれていて、34か所の海外交流拠点(大学の紹介 海外の拠点 )を持っています。南極大陸でも、わたしの研究室からは女性で初めての昭和基地越冬隊員も出ましたし、初代の越冬隊長の西堀 栄三郎も京都大学学士山岳会会員でした。世界のさまざまの場所が皆さんの活躍する場所となることでしょう。
皆さんが今日からの5日间で学习される内容は、言うなれば京都大学の职员として知っておいてほしい最低限のことであると思います。これだけは少なくとも必要だという知识でしょう。その知识は、京都大学の职员としての必要な条件ということです。
そこで、「わたしは京都大学の职员です」と言えるために十分な条件はどのようなものだろうかということを、自分自身でこれから时间をかけて考えてほしいと思います。それがとりあえず皆さんに最初に与えられ、长期间にわたって课せられる最大の课题であろうと思います。京都大学の职员ですと言うためには、配属された部署によって、必要な知识が少しずつ异なっているでしょう。十分な知识を持つまでにはかなりの経験を积むことも必要でしょう。そのような思考と経験の元で、京都大学の职员であるための必要で十分な条件というものが、いずれ明确に自分の言叶で説明できるようになると思います。
わたし自身は、京都大学の総长に就任することが决まってから、この仕事をするために必要な条件と十分な条件は何だろうかと考えました。すでに长い年月を大学の学长として、あるいは私立大学の场合は理事长として、または学长と理事长、あるいは総长を兼务して、多くの方たちがさまざまの形でその経験を公表しています。あるいは逢って直接に话を闻きます。それらの贵重な経験に触れるときに、わたしは、学长の职にあるために必要な条件と十分な条件は何だろうかという観点で、书かれたものを読み、话を闻くことにしています。皆さんもこれからぜひ、京都大学の职员として、必要な条件と、十分な条件を考えながら、ご自分の仕事のデザインをしてみていただきたいと思います。

今年、2006年6月19日に、永年勤続表彰を行いました。勤続30年の55名の方々、および勤続20年の36名の方々が表彰を受けられました。その方々の永年勤続を夸りとする辉かしい笑颜を见ていると、それはまことにおめでたいことであると思いました。その表彰式で、わたしは次のようなことを话しました。
まず、京都大学を运営する方针の中に、どのようなことを、わたしが置いているかということです。そこで、効率的な组织と运営システムを整え、情报技术を高度に利用し、教员の活発な活动を保つということ、职员の専门性を高め意识改革を促すこと、正确な情报が迅速に効果的に伝わるしくみを作って、意欲のある若い职员の挑戦を支援するということを含めています、と话しました。
そして次に、常に京都大学のミッションを念头に置いて毎日の仕事をしていただきたいと愿っています、と申しあげました。
その日、この表彰式の直前、若い职员の方々からの提案を闻いて役员会のメンバーが学习をするという企画がありました。若い职员の方たちが、20年、30年后の京都大学は自分たちが担っているというつもりで、今、热心に勉强会を开いており、その成果を役员などに闻いてほしいという申し入れを顶き、私はたいへん感铭を受けました。そして、永年勤続表彰を受けた方々にも、仕事を始めた顷、きっとそのような意気込みでおられたことを思い出されると思います、と申しあげました。
皆さんも、これから20年、30年后に向かって、どうか、ご自身の健康を大切にしながら、専门性を高める努力を続けていっていただきたいと思います。そのご努力に応えることのできる职场にしていくことが、わたしたち役员会の勤めであり、皆さんの努力に応える运営をしていきたいと思っています。

仕事をするためには、正确で十分な情报を持つことが必要です。现在はネットワークの世界にわたしたちはいて、ウェブサイトを検索するとたくさんの记事が出てきます。情报というのは、确かにそのようなサイトの中にもありますが、どれが真に重要な情报であるかどうかは、自分で判断しなければなりません。そこでは、わかったということと、わかったような気がするということの违いをはっきり认识していることが重要です。さらに、情报というものは、それを蓄积し伝え、検索する仕组みももちろん重要ですが、情报を生产する人も重要であるということを忘れてはなりません。そして重要なことは、京都大学はこの情报を生产する役割を持っている大学であるということです。京都大学には、109年の歴史の中で蓄积された豊かな知のストックと、それを増殖させる知の生产者たちが日夜研究を进めているということが重要です。
例えば、わたしの氏名でサイトを検索してみてください。わたしの氏名はそれほど同姓同名が存在しないので、そこに见つかるサイトの多くはわたしが発信した情报を掲载しているサイトです。また、例えば「変动帯の文化」というキーワードで検索してみると、その言叶はまだわたしのサイトにしか出てこないということがわかります。わたしの仕事では、この「変动帯の文化」の概念を広めることに一つのポイントを置くつもりです。
いつも、わたしは京都大学で仕事をする方たちに申し上げることがあります。まず大学のミッションを明确に把握していてほしいということです。それさえ忘れなければ、たとえ仕事に行き詰まって、进むべき道が见えなくなっても、迷うことはありません。京都大学のミッションをそこで思い出してもらえば、かならず解决すると思います。また、职员の皆さんは、学生の颜と名前をできるだけ覚えて仕事してほしいと思います。职员は教员や大学の执行部と学生たちとの间の重要なインターフェイスであると、わたしはいつも申します。
具体的なことですが、ホームページのわたしのページには、メールアドレスがあります。それは学内外のどなたでも、わたしにメールを送ることができるように、総长に就任したときから设定してあります。教职员と学生が3万人以上いる大学で、なかなか直接お目にかかって话することができないと思いますが、メッセージがありましたら、そのメールで伝えてください。どんなことでも、皆さんの若い目で気づいたことをもとに、ぜひご提案を顶きたいと思います。一つひとつに返事はできないとしても、わたしはかならず自分で読んで、大学の运営に活かしています。また、京都大学のメールマガジンも発行し始めました。それもぜひ読んでほしいと思います。
皆さんがお元気で、学内外で活跃してくださることを祈って、研修会の开会の挨拶といたします。