新年にあたって京都大学の職員の皆さんへ (2008年1月7日)

尾池 和夫

尾池総長明けましておめでとうございます。

今年の冬休みは、少し长く休暇を楽しんだ方もおられると思います。日ごろ、思い切り仕事しておいて、ときには少し长期の旅行をして、幼少期を过ごした故郷の暮らしを思い出しながら新年を迎える伝统行事に参加したり、异なる歴史を持つ他の都市で过ごしたり、あるいは大自然の空気に触れたり、部屋に笼もって読书に励んだりと、休暇の过ごし方はそれぞれでしょう。どのような过ごし方をしても、こころとからだの健康にいい効果をもたらします。

年末ぎりぎりに総务部から、1月4日の皆さんへの挨拶を7日にしてはどうかという提案をいただきました。このような提案をもっと早く、と一瞬思いましたが、ぜひ実行するよう即答しました。今年は闰年ですから、最初に1日休んでも、2月末に取り戻せる訳であります。もちろん4日から脇目もふらずに仕事をしておられた方々もたくさんいました。

山中 伸弥先生も元気な顔で、帰り道を歩いていた私に、「頑張りますのでよろしく」と声をかけて走りすぎていかれました。

年末の28日に、松本理事から颈笔厂细胞研究センターの方向付けが少し见えてきたという报告を受けて、私も安心して少しゆっくり休むことが出来ました。大晦日から元旦にかけて、久しぶりにテレビを见ましたが、とくに初日の出の中継に兴味を持ちました。

日本は季语の国です。プレート运动でできた縁辺海である日本海から大量の水が列岛に运ばれて、起伏に富んだ地形によって世界でもまれに见る积雪をもたらします。活断层运动でできた盆地には豊かな地下水があり、四季折々の产物の恵みを私たちは楽しむことができます。东には地球の半分を占める太平洋が世界に通じています。西には日本に文明をもたらした大陆があり、南には东南アジアの国々があります。
このような日本列岛の位置づけのもとに、今年も京都大学の将来を考え、安定した运営を心がけて行きたいと思っています。

 

会場の様子昨年の最後の役員会のあと、年末には、平成20年度の予算案が決まり、山中 伸弥先生たちの研究ティームに特別の予算が計上されたり、京都大学、慶応大学、東京大学、早稲田大学の4大学間で大学院教育の交流協定が締結されたり、いくつかの重要な出来事がありました。

今年は、法律に基づいて行われる大学の評価に関連して、特別の年になります。今年度の機関別認証評価の結果は3月に発表され、京都大学の教育の内容を広く知っていただく機会になります。平成20年度に行われる国立大学法人の評価は、第1期中期目標期間のうちの4年間の成果に関する評価を受けるもので、第2 期中期目標期間の最初である平成22年度の概算要求に反映され、さらに第2期中期目標全体にも深く関係します。そのための準備に、皆さん方全員が、それぞれの部署の日頃の仕事だけではなく、広い視野で資料をまとめながら、京都大学の将来を自分のこととして、考えて行くことが大切です。

大学の仕事は、教育と研究と社会贡献です。その仕事にとって一番大切な资源は人材です。一人ひとりが持っている能力を最大限に発挥しながら、教育に従事して次の世代の人材を育て、あるいは社会人の再学习を支援します。また、最大限に能力を発挥して新しい知的资源を蓄积して世界の人类に贡献します。知财の蓄积を最大限活用して広く社会に贡献します。
このような活动は、学生の纳付金やさまざまの公的な资金、市民や公司からの寄附、あるいは产学官の连携などによって行われます。したがって、活动の内容は、市民にわかりやすく説明して理解してもらうことが必要です。そのため広报机能は大学にとってたいへん重要な窓口です。今年も、大学の中の出来事を正确にわかりやすく、かつ迅速に広报する仕事を进展させていくことが必要です。

财务の仕事は、単なる経理だけではありません。教育研究社会贡献に必要な资金を长期にわたって计画的に确保し、効率よくそれを役立てることが重要です。中でも教育に対する基盘的な経费を安定的に确保するための工夫、学生が安心して学习できる环境を确保していくことが大切です。また、资金を効率的に支出して基础研究の场を整えていくことが重要です。


会場の様子企画や国际交流や総務の仕事は、長中期の大学の運営について新しい積極的な提案をしていくことが重要です。そのためには世界の動きに関して常に情報を素早く収集して分析し、その結果に基づく具体的な提案をまとめていかなければなりません。その目的のためには、日本列島の位置づけを意識した上で、大いに外に出かけて、優れた仕事をしている人たちとの交流を大切にしてほしいと思います。

どのような分野の仕事であっても、安全と安心を基本として、法的な决まりは最低限の义务であると心得つつ、大学に入ってきたばかりの学生に、いかにわかりやすく亲切に接するかを常に考え、教育と研究の仕事が効果的に进むためにはどうすればよいかを常に考えながら、昨年と同じ流れに乗ることを基本とせず、常にマニュアルを改订しながら、今年も、密度の高い内容を时间内に、という心がけで、仕事してほしいと愿っています。

大学の中では、さまざまの研究が行われ、その成果の蓄積をもとにして教育が行われています。学生たちがのびのびと学習し研究するための器がこの京都大学であります。魯山人は「器は料理の着物」と言い、料理を活かすための器をたくさん創作しましたが、大学ではその料理にあたるのが卒业生です。素晴らしい卒业生に見て貰えるように研究室を用意し、論文を仕上げるように学習環境を常に整えていかなければなりません。いつも言うように、職員の皆さんは、教員と学生の、あるいは大学と社会の間の重要なインターフェイスであります。その役目を果たすために役立つと思う企画を考えて、どんどん提案してきてほしいと思います。改革のための皆さんからの提案こそが、京都大学の未来にとって一番重要なものであります。

今年は、京都大学创立111年です。このような111周年を记念して京都大学の将来を考えた论文を募集することが计画されています。応募条件を満たした论文には参加赏を出すよう、今検讨して貰っています。ぜひ优れた论文を出して下さるよう期待しています。

优れた论文を书くためには、先を见る力が必要です。先见性とも、见通す力とも言えます。京都大学は、「未来」という言叶の付いた研究组织を持っています。2007年4月1日に発足した「こころの未来研究センター(外部リンク)」です。未来を见通すためには、大変な能力と知识の蓄积が必要です。京都大学にはそれがあるからこそ、このような名を付けて研究センターを発足することができたのです。

例えば、大学院地球环境学舎は、学问としての先见性、深さと広がりを备えた新しい地球环境学を开拓しうる高度な研究者の养成を目指します。医学研究科は、専门领域での深い学识に加え基础生物学から临床医学?社会医学までを见通す広い视野を备えた医学研究者の养成を行います。上田佳宏理学研究科准教授たちは、爱媛大学などと协力して、透过力のきわめて强い「硬齿线」を用いて、かつてない高感度で宇宙の全天を见通しながら全天マップを作成しています。その中で、知られていなかった巨大ブラックホールを発见しました。

见通す力は、时间空间を超えて広がる视野を与えてくれます。そのような力を养う机会として、京都大学の将来を论じる论文を书いてほしいと愿っています。

念のために付け加えておきますが、京都大学と縁の深いアラン?ケイ博士は、「未来を予测する最善の方法は、自らそれを创りだすことである」と言われました。京都大学を卒业した人たちも、京都大学で働く教职员も、自ら未来を创り出す人たちであると、私は思っています。

今年も、こころとからだの健康を第一に仕事していただくよう愿って、新年の挨拶といたします。

ありがとうございました。