京都大学オープンコースウェア総長懇談会 挨拶 (2007年10月30日)

尾池 和夫

尾池総長&苍产蝉辫;オープンコースウェア(翱颁奥)(外部リンク)は、自由な「知」のアクセスとして、大学での讲义をウェブサイトに掲载して公开し、人类の共有知の形成を目的としています。それに賛同してすでに讲义を掲载しておられるさまざまの分野の先生方が、その活用の様子を今日はご绍介くださいます。惭滨罢の宫川教授も参加してくださっていて、たいへん热のこもった会になりそうです。

「この京都大学翱颁奥は、京都大学で讲义に利用している教材をインターネットで公开するプロジェクトです。学内の学生、教职员、他大学の学生、関连学会の研究者、京都大学を志愿する高校生、さらなる学习を志す社会人など、あらゆる方々に京都大学の讲义内容を知っていただくことを目的とします。これによって、広く社会に贡献するだけでなく、ウェブにおける知的资产の蓄积に贡献することを目的としたプロジェクトです。この知的资产の世界を十分に楽しんでください。また、内外に多くの方々に宣伝してくださるようお愿いします。」

このような挨拶を掲载して京都大学オープンコースウェアが京都大学のサイトに登场したのは、2005年5月でした。大阪大学、京都大学、庆应义塾大学、东京工业大学、东京大学、早稲田大学が参加して、日本オープンコースウェア连络会(闯翱颁奥)が発足し、合计153コースの授业を公开したのが始まりでした。

もともと、OCWの事業は、1999年秋から、MITでe-Learning検討委員会が発足してから、学部代表による集中的な検討が行われた結果、 2000年秋には、その検討委員会から「オープンコースウェア」のコンセプトがチャールズ?M?ベストMIT学長(当時)に答申されたことから始まりました。そして、2002年9月には、MITオープンコースウェアパイロットサイトとして、23分野、50コースが公開されました。2003年9月には、 MITオープンコースウェアが正式に発足し、 33分野、500コースが掲載されました。2004年8月には、東京工業大学で、2004年11月には、慶応大学で、MITOCWワークショップが開催されました。そのときには、10大学が参加していました。そして先ほど述べた2005年5月の京都大学他合計6大学からの153コースの公開となりました。そのころ、2005年12月には、MITのコースは、すでに1250コースになっていました。

2006年4月に、京都大学でオープンコースウェア国际会议が开催され、日本オープンコースウェアコンソーシアムが発足しました。そのとき、闯翱颁奥公开コースは合计で、356コースになっていました。今年、2007年8月现在、闯翱颁奥加盟机関数は21になっています。

2002年の夏から、京都大学では、オープンキャンパスという行事を始めました。これは高校生たちに京都大学を紹介する行事で、毎年8月の二日間をあててキャンパスを公開するものです。このオープンキャンパスという言葉が妙に気になっていて、わたしはいろいろ調べていました。英語で"open campus"と入れて検索すると、日本の大学ばかりが出てきます。英語圏では、"open campus"が例えば"Distance Education"であったり、"Online Courses"だったり、"Web-Enhanced Courses"であり、"Telecourses"であったりするわけです。

2004年にもこの日本式オープンキャンパスが8月17日、18日と開催されていて、この言葉を気にしておりました。次の日、2004年8月19日(木曜日) 10時ちょうどに、総長応接室にMITの宮川 繁教授と、メディアセンターの美濃教授が現れました。これが歴史的な日になったわけであります。宮川先生は、 MITOpenCourseWareのことを話して、京都大学でもやりませんかというご提案をくださいました。わたしはこれこそ"Open Campus"だと思って、すぐ美濃先生に世話役をお願いし、宮川先生にご指導をお願いしました。それから美濃先生のご苦労が始まり、学内のさまざまのご意見のまとめ役をしていただいて、さらに国内の大学との連携の相談をしていただき、今日に至りました。

2004年に教育制度委员会に、この翱颁奥を実施するかどうかを諮问し、総长裁量経费による调査が进められ、テスト的に进めるという答申が出されました。それは2007年3月时点で判断するというものでしたが、皆さま方の热意のおかげでわたしは継続を决心することができました。

 
当日の様子今、日本で2005年の当初から参加したそれぞれの大学が、この翱颁奥をどのように表现しているかを见ると、大学のカラーが出ていておもしろく読めます。

『早稲田大学は1882年、大隈重信によって创立された120年の歴史を持つ総合大学です。早稲田大学はその教旨に「学问の独立」、「学问の活用」、「模范国民の成就」を掲げこの理想に向かって革新的な高等教育システムを発展させ、谁にでも开かれた教育环境を构筑することに不断の努力を重ねてきました。
この度、マサチューセッツ工科大学 (MIT) との密接な協力関係に基づき、OCWの目指す世界規模の教育ネットワーク構築の一助となるべく「早稲田大学OCW」を導入することにしました。
早稲田大学翱颁奥への讲义教材公开には、开讲科目のシラバス情报を公开する电子検索システムと连动して翱颁奥の趣旨に賛同する教员が任意に资料を公开しています。未だ试行段阶であり、现在公开されている讲义资料は仅かではありますが、今后の発展にどうぞご期待ください。』

『庆应义塾翱颁奥は庆应义塾大学で実际に提供されている讲义の内容を一部电子化し、无偿で提供しています。
慶應義塾の在校生、卒业生であるなしに関わらず、広く一般の方々の勉学の参考にしていただけることを願っております。この取り組みは米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のオープンコースウェア(OCW)と連携し、世界中の知的資源を必要としている人々に提供されています。』

『東京大学では、公開講座?講演会などの社会连携事業を中心に、大学の知の公開に努力してまいりましたが、この度、さらなる社会ニーズの高まりに答え、教育活動の資産である講義資料をインターネット上に公開することにいたしました。
东京大学翱颁奥では、东京大学で行われている讲义の一部について、シラバスや配付资料を手に入れることができます。これにより世界各国の教员や学生を支援することができればと考えております。
(中略)
この考え方の一部を実现するために、东京大学翱颁奥の検索システムは、シラバスを自动解析し、関连する授业を関连付けて表示し俯瞰的に可视化することができるようになっています。これにより、兴味のあるトピックに関连する讲义资料を容易に选択することができます。また、东京大学だけではなく、今后世界各国で公开される翱颁奥形式の讲义资料を関连づけて検索することも可能です。东京大学翱颁奥は、世界规模の自律分散型の讲义资料データベースとして机能することになるのです。』

『大阪大学は、「地域に生き、世界に伸びる」をモットーとしており、市民から信頼される判断力、豊かな构想力、さらには异なる文化的背景をもつ人々ときちんとコミュニケートできる资质を备えた人材を育成するため、「教养」、「デザイン力」および「国际性」の叁つを具体的な教育目标に掲げています。また、研究推进のキーワードとして「ネットワーク」と「インターフェイス」を掲げ、多种多様な连携を有効活用して、学际融合的な新学问领域の开拓を推进するとともに、その结果を教育に反映させることを目指しています。今回、国内6大学と连携して、マサチューセッツ工科大学の提唱する翱颁奥に大阪大学で行われている教育および研究活动の资产を公开することは、まさに「知のネットワーク」の构筑に参画することであり、それは、「知の交流」の场としての大学の使命であると同时に、社会贡献活动の一环としての当然の责务であると考えています。また、この「知のネットワーク」に可能な限りの教材を公开することは、「デザイン力」、「国际性」という教育目标の実现に大きく资するものと确信しています。』

『東京工業大学オープンコースウェア(OpenCourseWare (TOKYO TECH OCW))は、本学の理工系教育を世界の共有財産とすべく、講義要旨を無償で公開するプラットフォームです。』これが一番単純明快です。

それで、京都大学ですが、京都大学では、「京都大学大同叁则」と掲げたうえで、次のように説明します。

『京都大学翱辫别苍颁辞耻谤蝉别奥补谤别は、全人类のための「创造的グローバル=ローカルな知のクラスタ」という视点から、国际的な知的资产の蓄积に贡献参加すること、および京都大学のビジビリティを高め、世界中から优秀な教员、学生を発见すること、およびインターネットによる国际的な教育展开を狙っています。』
さらに、『OCW@KUは、MITOCWへのアクセスの6割がアジア圏からであるという事実を考慮した情報発信をねらっています。アジア各国からの優秀な留学生をリクルートするとともに、世界に向けて、京都の文化?伝統を持つ京都大学の教育をアピールするために、積極的に日本語を使って、OCWを作成していきます。さらに、OCWを新しい教育メディアとしてアジア各国とのコミュニケーションを高め国际交流を推進してゆきます。』
また、『翱颁奥@碍鲍は、物理的なキャンパスの枠を超えて先生を「情报化」して、よい学生、教员と出会うチャンスを作り出します。また、教材公开による教员への新たなフィードバックはグローバルな発展への原动力となります。』
というように表现されています。

今后の课题として、日本语の学习教材の开発、各国语への変换、コースの飞跃的な増加を実现するためにどうするか、维持の体制をどのように筑いていくか、受讲者の声をどう反映するか、対话型の讲义を导入するかどうか、讲义の记録を大学としてどのように系统的に集めていくか、别-濒别补谤苍颈苍驳とどう関连づけるか、颁础尝尝とどう连携するか、机関リポジトリーとの连携、映像アーカイブとの连携、讲演の记録は含めるのか、讲义の内容を魅力的にしていく方策、システムの开発、大学全体での认証システムの整备などなど、たくさんの课题が研究テーマとしても存在すると思っています。

皆さまの热意あふれるご协力の下で、これらの课题に挑戦する京都大学であってほしいと愿って、わたしのお礼とご挨拶といたします。