「高次生体イメージング先端テクノハブ」プロジェクト発足会 (2006年10月23日)

尾池 和夫

尾池総長

 このたび、本学の工学研究科と医学研究科が中心となり、さらに协働机関としてキヤノン株式会社という强力なパートナーを得て、「高次生体イメージング先端テクノハブ」を発足させる日を迎えることができました。この新しい协働研究プロジェクトは、人类の未来社会に大きく贡献し得る成果をもたらすものと大いに期待されています。京都大学として、多くの本学教职员とともに、この新事业の开始を夸りに思います。本プロジェクトの発足にあたりお世话になりました文部科学省并びに科学技术振兴机构の皆様にお礼を申し上げるとともに、西本工学研究科长、成宫医学研究科长、小松先端技术研究本部本部长を始め、プロジェクトの立案并びに発足に尽力された関係各位にお喜びを申し上げます。

 京都大学は、その基本理念にも掲げていますように、创设以来筑いてきた自由の学风を継承?発展させつつ、多元的な课题の解决に挑戦するとともに、地球社会の调和ある共存に贡献することを目的として、研究?教育活动を展开しております。
 また协働机関のキヤノン株式会社におかれましても、「共生」を公司理念に掲げられています。世界の繁栄と人类の幸福に贡献するために、先端科学技术を基盘として公司の成长と発展を図り、経済的?社会的価値の创出に努めておられる公司です。

 このような京都大学、キヤノンの両者が手を取り合い、新たに先端融合领域のイノベーションを目指した医工连携の研究プロジェクトを、长い议论を重ね、周到な準备を経て企画立案して参りました。その结果、文部科学省の平成18年度科学技术振兴调整费の新规事业として採択されました。このことは、両者が掲げております理念?目标、さらにこれまでの実绩を考えれば、当然の帰结であり、また最良?最强の协働研究チームが编成されたと考えています。

当日の様子

 「健康」、これは洋の東西を問わず、人類の共通の願いです。このプロジェクトでは、人にやさしく、しかも高感度?高分解能で生体組織の形態や機能を計測し、画像化できる「高次生体イメージング」の技術開発、並びに医療用診断機器の製品化に取り組むこととしています。21世紀に入り、日本をはじめとして世界の多くの国々が高齢化社会を迎える中で、病気の早期発見と予防医療を実現する医療分野の科学技術イノベーションが強く求められています。10カ年計画で実施されるこのプロジェクトが成功すれば、世界の人々の健康な暮らしに貢献し、生活の質(Quality of Life)を飛躍的に向上させることができるでしょう。と同時に、医療診断分野で新産業の勃興を促し、大きな経済発展とともに社会的価値をもたらすはずです。
 このような大きな目标を达成するためには、従来の学问领域を越えて、医学、工学、情报学、薬学、を始めとする多元的な学问领域を集学し、融合することが是非とも必要であり、さらに公司と大学が、従来の共同研究の枠を越えた融合的な研究开発を展开する必要があります。これはまさに京都大学がストックしている多元的な科学技术の「知」を、社会がもとめる価値に転换するプロジェクトになります。

 このプロジェクトの名称である「先端テクノハブ」には、すべてが集まる「中心」、「中枢」という意が込められています。もちろん「高次生体イメージング」という目标に向かって、多様な分野に蓄积された学理と技术、知が集まる拠点になる、という意味があるでしょう。それとともに、医工连携研究という新分野に贡献できる若手研究者?技术者を育成する融合教育の拠点、すなわち人材が集まる拠点を形成することも目标に掲げています。
 京都大学では、すでに平成17年度より、医学研究科、工学研究科、再生医科学研究所が连携して运営する新兴分野人材养成プログラム「ナノメディシン融合教育ユニット」を设置し、医学领域と工学领域における大学院レベルの融合教育プログラムを通じて、人材育成に积极的に取り组んでいます。未来に繋がる新しい学问分野を开拓し、その発展を基盘から支えるためには优れた人材の育成が不可欠です。
 今回のプロジェクトの発足により、医学と工学の新しい融合分野を开拓するための研究と教育という、まさに车の両轮が京都大学に备わったと言えるでしょう。多様な学问分野と豊富な人的资源を夸る卓越した総合研究大学として、また社会の要请に応え贡献する大学として、京都大学がこのプロジェクトを担い、発展させることになりました。本日はその起点となる记念すべき日であり、プロジェクトの成功を通じて、京都大学が掲げる理念の具体的成果を社会に示すことを愿ってやみません。

 「高次生体イメージング先端テクノハブ」の発足にあたり、京都大学を代表してのご挨拶とさせていただきます。