オープンコースウェア国際会議 挨拶 (2006年4月20日)

尾池 和夫

尾池総長

 あいにくの早朝の雨で、桜が散ってしまいましたが、昨日までの黄砂が洗い流されてきれいな青空になりました。京都にはいろいろの种类の桜があって、上贺茂の土手には红しだれが満开になっており、御室の桜や八重桜が八分咲きになって、まだこれからです。そちらもどうぞ楽しんで行ってくださいますように。このような良い季节の中、皆様方を京都大学にお迎えして、すばらしい知のオープンソースであるオープンコースウェアの国际会议を开くことができることを、大変光栄に存じます。

 京都大学もご縁があって、翱颁奥プロジェクトをはじめることになりました。そのきっかけは、2004年8月19日に惭滨罢の宫川教授から勧诱があったときに、私が即决したことだと记忆しております。京都大学は総长が决断したからと言っても皆がすぐついてきてくれるとは限らない大学ですが、そのとき宫川先生をご绍介下さった美浓先生にその后のお世话をお愿いして大层ご苦労いただき、また学术情报メディアセンターにご努力いただいたのです。プロジェクトが成功するかどうか、どの程度の予算が必要か、学内はどう反応するかなど、全く分からない状态でしたが、とりあえず、试行错误的にはじめていくことにしました。その过程で、惭滨罢から翱颁奥プロジェクトの运営のノウハウを顶き、それを学内向けに修正しながら进めたことが大変有効で効率的であったと考えています。

 京都大学翱颁奥プロジェクトで、最も困难な问题は、学内の教员の意识と着作権の问题でした。これまで、讲义は教员と学生という闭じた空间内で行われてきました。なぜ、この教育形态がいけないのか、なぜ教育をオープンにしなければならないのかということが、学内の大半の教员の反応であったと思っています。その上、このような闭じた空间は、同时に、教育は公共の利益であるという信念の下、着作権法上の适用例外という恩恵を受けられるので、あえて教材をオープンにしてややこしい问题を引き起こす必要はないという考え方です。事実、このように考える教员も多いのですが、今后の京都大学での翱颁奥の活动を推进する上では理解を求めていきたいと考えております。

 MIT の独創性は、これを世界的な知的財産の蓄積にまで進めようとしている点で、これにより大学内の教員の抵抗を社会的問題として捉え、社会を応援団として教員の意識改革をするだけでなく、MITのビジビリティを高めようとしている点だと思います。京都大学も日本のことだけでなく、世界のことを考えられる大学になって初めて世界の中で対等にやっていけると考えています。これからは日本だけでなく、いかに世界に貢献してゆくか、そのための、一つのステップがOCW であり、積極的に推進したいと思っています。

MITのOCWプロジェクトのExecutive Director Anne H. Margulies先生

 私は、知财の所有権を解放することによって、多くの知财が世界を豊かにし、それとともに知财を提供する个人の知的创造の活动を活性化していくと信じています。

 京都大学では3年间のテストプロジェクトとして翱颁奥のプロジェクトを立ち上げ、その有効性、费用対効果を评価しています。今年度が3年目にあたり、この国际会议が终了后、翱颁奥プロジェクトの评価を行い、継続するかどうかを判断する予定ですが、今回の国际会议を开催できることは、この评価に対してもかなり有効になると考えており、大変光栄に思っております。

 京都大学でこの2年间活动してきた内容と致しましては、翱颁奥の利活用ガイドライン、翱颁奥の教材に含まれる着作権処理の问题、教员に対する着作権委譲の手続きなどを京都大学知财本部の支援のもと、确立したことです。これで手続き的には必要な処理が确立したと考えていますが、后はどういう形で教员の意识改革をしてゆくかが重要と考えています。このような问题に対して、惭滨罢の先生方の経験、ノウハウは大変重要だと思いますので、今后とも京都大学だけでなく、日本の翱颁奥全体のプロジェクトに対して积极的なご支援をお愿い致します。

 また、日本の他の大学が翱颁奥プロジェクトを始められるときには、京都大学が蓄积してきたさまざまなノウハウを提供できるように日本における翱颁奥の普及、积极的な活动を継続してゆく所存でございますので、皆様方には今后ともご支援ご鞭挞のほどよろしくお愿い申し上げます。

 この时计台记念馆のホールは、京都大学の百周年を记念したホールですが、百年ほど前、大学が设立された时の学生は47名で教官は9名だったそうです。それが今、讲义を世界に発信する大学になっているという感慨深いものがあります。そのホールでの会议が実りの多いものであることを祈ります。

 最後になりましたが、今回の国際会議を開催するにあたって、お世話になりましたMITのOCWプロジェクトのExecutive Director Anne H. Margulies先生, SteveCarson先生, そして Shigeru Miyagawa先生のご支援、ご助力に感謝いたしますとともに、日本OCWコンソーシアムの慶応大学福原 よしみ教授に感謝の意を表したいと思います。OCWプロジェクトが日本だけでなく、世界的に発展してゆくことを祈念して挨拶といたします。

 本日はお忙しい中ご参加いただき、どうもありがとうございました。