早稲田大学との協定 挨拶 (2006年4月10日)

尾池 和夫

尾池総長と白井総長

  京都大学は国立、公立、私立の区別なく、実質的な交流を学生のために、研究のためにという目的のもとに進めてきました。今回、早稲田大学総長の白井 克彦先生と、交流協定にサインしたのは、たいへん歴史的な出来事でもあり、まことにめでたいと思います。

 京都大学は、「地球社会の调和ある共存に贡献する」という基本理念を持っています。

 早稲田大学の建学の祖、大隈重信の言叶には、「东西文明の调和が平和を导くもの」という考えが述べられています。両大学の理念に照らして、教育と研究の连携をはかっていくことは、きわめて自然のことと、私は思っています。

 「インドネシア?スマトラ島における学生会員による防災教育活動」という報告が昨年の11月に早稲田大学と京都大学で報告会がありました。土木学会の学生会員である京都大学大学院工学研究科塚澤 幸子さんと早稲田大学大学院理工学研究科横井 千晶さんの報告で、インドネシア語で作成された教材、アニメ、早稲田ベアーなどを用いて、メダン市やバンダ?アチェ市の子供たちに災害教育を行ったというものです。大学間協定ができる前から、例えばこの学生たちの交流のように、両大学の交流が行われています。

 もちろん教员たちの个别の交流はさまざまの分野にわたって行われています。

 これから大学の运営はいろいろと大変なことがあると予想されますが、この点でも白井総长は大先辈であり、例えば、国际教养学部の运営、リベラルアーツ教育、生涯教育、また财政の健全化など、このような大学运営の面でも、早稲田大学の取り组みを学び、ご协力、ご指导をいただきたいと思っています。

 紺碧の空は、1931年8月に制定された早稲田大学の第一応援歌であり、京都大学の応援歌に出てくるダークブルーはスクールカラーです。春烂漫の4月の空の下、协定书にサインできたことが何よりです。

 これからの教育と研究の课题では、どんどん幅広くなる学问分野のスペクトルの中で、単位互换というようなことが必ず必要になってきます。今回の提携の话し合いと、今日の连携协力协定书缔结から、将来のさまざまな具体的な交流が进んでいくことを愿って、挨拶といたします。

共同ブランドビールについて、コメント

尾池総長と白井総長

 このビールは、吉村 作治先生のエジプトの古代文明の研究、木原均先生の小麦の祖先の発見という、いずれもフィールドワークの精神による研究成果が出会ったものであり、ナイルの水の文化と、京都の地下水の文化との出会いによる文化の融合から生み出されたものでもあると、私は思っています。その出会いが、「ホワイトナイル」の名に秘められていると思います。

 ナイル川は世界で最长の川です。约6,700キロメートルとも言われ、稚内から鹿児岛までの鉄道距离が约3,300キロメートルですから、その2倍はあるという长い川です。

 私は、少年の頃、アフリカを探検するリビングストンとスタンリーの話を読みふけった思い出があります。ナイル川は、スーダンの首都ハルツームで、ビクトリア湖へ行くWhite Nileとエチオピア高原へ伸びるBlue Nileに分かれます。

 このビールには、ホワイトナイルの名が付けられました。何ともゆったりとした気分で饮めそうな気がします。

 2005年9月24日(土曜日)に白井先生にビールの件を提案しました。上海で、復旦大学100周年の记念式典で日本から私と、白井先生の二人が式典の雏坛に招かれました。そのときに提案したのです。いいですね、という即答をいただきました。昨年12月19日(月曜日)には、京都大学の桂キャンパスのレストラン「ラ?コリーヌ」で、白井先生たちと何种类かのビールの试饮を兼ねて昼食会を行いました。

 そして今日の発表です。黄桜酒造株式会社、早稲田大学の吉村 作治先生、京都大学の農学研究科栽培植物起源学研究室の河原 太八先生、国際融合創造センターの澤田 芳郎先生たちをはじめ、多くの関係者の強力がありました。たいへんうれしく思っています。

 私は、京都大学でさまざまのことを提案しながら、実行していますが、常に京都大学の基本理念に照らして、この大学のミッションを考えて、メリットとデメリットを并べて検讨した后に提案します。このビールについても、さまざまの面から検讨しました。

 京都の文化は地下水の文化であるという点で、それでビールを作るのはいいのですが、京都プロトコルで京都は知られており、ビールは炭酸ガスの排出量を増やすものであるというのが、イメージとしてやや心配という问题が気になっています。製品ができた以上、できるだけ多くのビールを饮んでほしいのですが、炭酸ガス排出量がどの程度増えるかを计算する必要があるかもしれません。

 でもどうか、皆さんは悩まずに楽しんでいただければと愿っています。ビールの歴史と文化、フィールドワークの意义を伝えるブランドとなってくれることを愿っています。

 ありがとうございました。