尾池 和夫

今日、京都大学医疗技术短期大学部を卒业される、看护学科85名、卫生技术学科35名、理学疗法学科18名、作业疗法学科22名、合计160名の皆さん、および専攻科助产学特别専攻を修了される20名の皆さん、おめでとうございます。ご来宾の方々、ご列席の教职员とともに、またご列席のご家族とともに、心からお祝い申し上げます。
皆さんを加えて、短期大学部の卒业生は累計3990名、専攻科修了生が累計598名になりましたが、今年は特別の意味があると思います。それは短期大学部の卒業式は今日で一つの区切りとなるからです。皆さんの築いてきた伝統は、今、医学部保健学科に引き継がれていて、すでに皆さんの後輩たちがそこで学習に励んでいます。
京都大学の歴史にはさまざまの前史がありますが、大学としての歴史は1897年、明治30年から始まります。理工科大学が开设され、ついで2年后、1899年7月に法科大学と医科大学が开设されました。その医科大学が今の京都大学医学研究科と医学部の前身であります。その年の12月には医科大学附属医院と看护妇养成所が开设されました。
京都大学の生まれたその年、1897年の4月1日には、法律36号である「伝染病予防法」が制定されました。日本で初めて、公衆衛生の考えが法律に書かれたのですが、これは北里柴三郎の研究成果などが実を結んだものであり、『第1条 此ノ法律ニ於テ伝染病ト称スルハ「コレラ」、赤痢(疫痢ヲ含ム)、腸「チフス」、「パラチフス」、痘瘡、発疹「チフス」、猩紅熱、「ヂフテリア」、流行性脳脊髄膜炎、「ペスト」及日本脳炎ヲ謂フ』に始まるこの法律は、2000年1月1日に廃止されるまで、日本の公衆衛生の基本の一つでありました。
このように、100年以上前にすでに日本の医学のレベルは高く、现在の医疗の水準も世界のトップレベルに位置づけることができると言えるでしょう。北里柴叁郎は1901年の第1回ノーベル赏の候补者でした。また、京都大学が学位を授与した野口英世もノーベル赏の候补者でありました。皆さんはそのような歴史を持つ日本の医疗技术の分野に、あるいはそのような歴史豊かなキャンパスに学んだ経歴に夸りを持って、社会に出ていってほしいと思います。

医疗技术短期大学部の学生さんたちは京都大学の中で最もよく学内で学习していると思います。京都大学生协が実施した第41回学生生活実态调査の报告から、それを数字の上で见てみると、例えば时间帯别の学内に滞在している率で见て、文系の学生が9时で28.3%、10时で73.3%、ピークの14时で85.0%であるのに比べて、医疗技术短期大学部では、9时88.9%、10时94.4%、14时までずっと94.4%のままでした。また、文系の学生の19时が11.7%であるのに比べて、医疗技术短期大学部では0%になっています。そのちがいを、私は大変兴味深く见ましたが、これが最もよく学习していると思った根拠であります。それはカリキュラムに従って授业に出席したという意味での评価です。これからも日々の学习が続きますが、今度はカリキュラムに従うのではなく、自ら定めた目标で自主的に学习することが大切です。ある期间の到达目标を自分で定めておいて、それを果たすように学习を计画的に続けてほしいと思います。
日本でも、チーム医疗の重要性が认识され、医疗従事者が连携して患者中心の医疗を実现し、市民の健康を守っていく健康科学の重要性が认识されています。また、身体のことだけでなく、心と体の一体としての健康を考える、あるいは医疗を考えることも、21世纪の重要な课题であります。皆さんは、学习して得た知识と経験を総动员して、さらに研钻に励みながら、これらの健康と医疗の现场に出ていこうとしておられます。
第3期科学技术基本计画が策定されますが、そこでも安全で安心な社会を実现することが大きな柱の一つとされています。皆さんの参加するチーム医疗は、まさに安心な医疗、安全な医疗、良质の医疗を、患者のために提供するための重要な场面になると思います。
チーム医疗の中で医疗技术者も大きな役割を演じます。医疗が高度化し、また多様化している中で、あるいは医学の研究が先端を行く中で、高度な医疗机器などのシステムを导入して操作するなどの技术も必要です。
私は自分が患者の一人として、惭搁滨、3次元颁罢、ヘリカル颁罢などの装置にも兴味を持ち、実际に体験もします。これらの机器は、専门の技师であっても1人で担当することはほとんど不可能になりつつあり、病院でも常に研修を进めています。皆さんも、卒业して后、急速に进む技术に敏感であり、常に最先端の技术を习得するよう心がけていただきたいと思います。
厚生労働省が所管する国家试験の表を见ただけでも、保健师、助产师、看护师、诊疗放射线技师、临床検査技师、理学疗法士、作业疗法士、视能训练士、临床工学技士、义肢装具士、歯科卫生士、救急救命士、管理栄养士、薬剤师、医师、歯科医师というように、実に多くの分野が、医疗の仕事に関连して存在することが分かります。これらのうちの多くの分野に、これから皆さんが活跃する场があるのです。

医師や歯科医師以外の医療従事者は、もともと、手伝うという意味のパラメディカル?スタッフ(paramedical staff)と言われてきましたが、最近では、協力関係を意味するコメディカル(comedical)スタッフというように変わるべきというのは、皆さんも学習してこられたことでしょう。最近では、言語治療士や医療ソーシャル?ワーカーなども加えられる場合が出てきました。医学が進歩し、医療機関が大規模になって、医療従事者の職種の分化が進んだ結果、大病院では50もの職種の人たちが医療に従事する場合があります。
今日、卒业式を迎えた皆さんはこれからさまざまの道を进んで行かれますが、いずれの道を选ぶにしても、皆さんの仕事は人の命と健康を守る仕事であります。そこではどんな场合にも失败をすることは许されません。今年の冬季オリンピックでは、选手たちの高度な技に挑戦する姿を私たちも紧张してテレビの画面で见ておりました。そこでは例え転倒してもさらに挑戦する姿に感动するのです。皆さんも人が感动するような仕事をぜひしてほしいと思いますが、その时の感动は、练习に练习を重ねた技术で一歩一歩、仕事を确実に进めていく仕事、どんな场合でも失败しない仕事からの感动でなければなりません。医疗では挑戦して失败するのは决して许されないのであります。
また、単に医疗技术だけでなく、医疗制度の変革についても関心を持っていてほしいと思います。市民の健康の维持と増进を図り、医疗、保健、福祉の向上に努める责任を国は持っていますが、财政を重视する改革が行われると、必ずしも市民の福祉に贡献する方向ではない改革が行われる可能性があります。改革のあるべき方向についても、医疗従事者として、患者や市民の立场に立った意见を持つように心がけてほしいと思います。
例えば、アメリカ合众国で医疗保険に加入していない人は17%にのぼると言われます。このように制度から排除される人が増えるという仕组みを日本に诱导してはいけないと思います。财政优先の竞争社会の考えが强く影响している日本で、医疗の制度をどのようにすればよいかというような课题も、卒业を机会に考えてみてほしいと思います。
これから、仕事が调子よく进んだときにも、あるいは仕事に行き詰まったときにも、どんなときにでも、母校を思い出して访问し、恩师に声をかけてください。京都大学と医学部保健学科が皆さんの母校だと思って访ねてきてほしと思います。
皆さんが、意欲に満ちた専门职として、医疗の现场で活跃されることを、また社会のいろいろな场所で活跃されることを祈って、私のお祝いの言叶といたします。
ご卒业おめでとうございます。