アスベスト問題?京都シンポジウム ~もう一歩ふみこんで、知り、学び、考える~ 挨拶 (2006年1月17日)

尾池 和夫

尾池総長

 皆さんこんにちは。

 京都大学が开催する「アスベスト问题?京都シンポジウム」「もう一歩ふみこんで、知り、学び、考える」に、远くから会场へお越しの方々も、学内の方々も、また、全国の5カ所の中継地点へ集まっていただいた方々も、ようこそご参加くださいました。ありがとうございます。

 本日、1月17日、阪神?淡路大震灾からちょうど11年になります。大震灾のときには建筑物が壊れて、建筑材料が飞び散ります。京都大学の时计台の建物は耐震性が低いということがわかって、地下に免震装置を入れてあります。ここから100尘ほど东の吉田山の西の麓に沿って花折断层があり、长い间动いていないことがわかっています。もしそれが动けば、京都大学のこのキャンパスも震度7で揺れることになるでしょう。そのとき、万一体育馆の天井が损壊するようなことがあれば、そこに使われているアスベストが飞び散ることになって、広い范囲に影响を与えます。そのような判断から、早期に回収することを决意しました。工事期间には、例えば第四锦林小学校のように、あちこちの设备をお借りしてお世话になることになりました。

 また、このアスベストを回収する工事にはかなりの资金を必要とします。その资金は大学の予算の中から捻出することだけではとてもまかなえる额ではありません。文部科学省をはじめ関係の方々のご理解とご努力により、また、市民の皆さまのご理解を得ながら、さまざまの形で支援していただくことになります。この点に関してもお世话になっている方々に心から感谢の意を表したく存じます。

 アスベストの問題に関しては、昨年、メディアでも大きく取り上げられました。例えば、毎日新聞大阪本社は、11月から12月にかけて、19回にわたって「アスベストを追う」という記事を連載しました。その第4回で、記事を書いた大島 秀利さんは、阪神?淡路大震災のときのことを書きました。「おびただしい数の建物が地震で崩壊したり、解体を余儀なくされ、その際に石綿が飛散したのだ。若者たちは、無防備の被災者たちを石綿から守るためにマスクを配っているのだった」とありました。2000年2月には「国内の規制が立ち遅れている」と報じたそうですが、大島さんはそのときのことを、「しかし、世間の関心は薄く反響は少なかった」と書いています。

 昨年6月、内阁府政府広报室は、全国の3,000人を対象にした「科学技术に関する特别世论调査」の概要を発表しました。科学技术に関する国民の意识を调査し、今后の施策の参考とするためのもので、それは第3期科学技术基本政策の策定に活かされるものです。

会場の様子

 调査项目は、日本の将来や次世代の発展への科学技术の贡献度や、重视すべき课题などでした。科学技术が日本の将来に贡献すると思うのは、回答者2,105人の内78.9%に达していました。

 课题では、环境の保全53.8%、安全な社会の実现45.8%、健康の维持?増进42.4%、科学技术に関する人材の育成34.3%という结果でした。このような安全で安心な社会の実现を多くの市民が求めているという结果を见ても、このアスベストの问题が多くの人にとって重要な课题であるということが言えます。

 市民の生活に、あるいは大学における教育、研究の环境に重大な影响を及ぼす问题について、私たちはその本质をよく理解し、现时点で研究者の持っている知识をできるだけ共有しながら、问题を解决する方策をしっかりと実行していかなければなりません。そのような背景から、今回このシンポジウムを企画することにいたしました。

 身近な场所から、しかも学生の皆さんが日顷使っている施设から危険なアスベストが见つかったとき、私たちはたいへん大きな衝撃を受けました。しかしこの际、アスベストとはどのようなものかを、市民の皆さんと一绪に、京都大学の教职员と学生が学びながら、今后の问题としてみんなで考えていこうということにしました。幸い、京都大学は総合大学としてさまざまな分野で国际的な活跃をしている研究者たちがいる大学です。その特徴を発挥して、今日のシンポジウムを企画してもらいました。短期间に充実した内容の準备をしていただいた、讲演者の方々、ご関係の方々、また京都大学环境安全保健机构に関连する研究センターなどの教职员の方々に深く感谢いたします。

 京都大学环境安全保健机构は、今年度の始まりとともに発足した京都大学の新しいしくみであり、発足してからすぐ、法人化して解决しなければならない多くの日常业务を忙しくこなしているセンターなどを束ねる机构ですが、その课题に加えて、アスベスト対策が浮上してきたものです。学生たちにとって安全で安心なキャンパスであるためには、どんなに忙しくても、与えられた课题をこなしていかなければなりませんが、アスベストの课题も、まさにそのような典型的な课题であります。今后とも、安全で安心な教育、研究、医疗の场を确保するために、皆さまのご理解とご协力をお愿いして、シンポジウム开催にあたっての私の挨拶といたします。

 ありがとうございました。