尾池 和夫

皆さま、おはようございます。本日、京都大学文学研究科が主催するこの国际シンポジウムで、京都大学を代表して开会の挨拶をさせていただく机会をいただき、まことに光栄です。
京都大学文学研究科は、本年4月、北京大学歴史学部との间で交流协定を缔结されました。その记念として、本日の国际シンポジウムを开催されることは、京都大学、北京大学の両方にとってまことに记念すべき歴史の1ページとなる重要なことであり、京都大学を代表して心からお祝い申し上げます。
このシンポジウムは、京都大学が鋭意取り组んでいる「21世纪颁翱贰プログラム」の23课题の中の1つ、「グローバル化时代の多元的人文学の拠点形成」の一环として位置づけられ、国际シンポジウム「京都と北京:光の交わるところ-学问知から人类知へ」と题されるものです。
我が国の大学の教育および研究の水準を向上させ、世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援し、国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを推進することを目的にして、文部科学省により、2002年度からこの「21世紀COEプログラム」が実施されています。その一つである「グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成」と題されたプログラムの内容の紹介の中で、拠点リーダーの紀平 英作教授は、「激しい移行過程にある現代世界を批判的に再検討し、新たな指針を模索するというグローバル化時代の総合的、かつ多元的な人文学的知の形成という課題に、歴史学を中心に、哲学、文学研究を組み合わせて挑むことを最大の目的とする」と述べておられます。

京都大学文学研究科と北京大学歴史学部との交流协定は、このような京都大学が进める拠点形成のためにも重要な役割を演じ、同时に北京大学における教育と研究の発展にも大きく贡献するものであると、私は信じております。
日本と中国の交流、とくに学问と留学の歴史には、言うまでもなく长い歴史があります。多くの往来が、さまざまの形态で、あらゆる时代を通じて、日中间で行われてきました。
1897年に创立された京都大学と、1898年创立の北京大学とは、ともに100年以上の歴史を持ち、东アジアの主要大学として活动しています。京都大学への最初の外国人留学生は1906年に中国から来た学生だったと言われています。
私自身が北京大学を最初に访问したのは、まだ日中间に直行便の飞んでいない1974年で、そのときから约30年がたちました。北京大学のある北京市北部、中関村の変容には目を见张るものがあります。その変容はまさに午前中のテーマである「グローバル化と日中の行方」の课题を思わせるものであります。
この京都大学时计台百周年记念ホールは、京都大学の创立百周年を记念して新しく作られたホールですが、この南侧に接している时计台は1925年に建てられ、今では免震构造で耐震化されています。京都も北京も活断层地域の中にあって、大地が激しく动き、大地震の起こる地域です。欧米の文明が安定大陆から発生したものであり、そこから世界に拡がっていったものであるのに対して、东アジアの文明は変动帯の中で育まれてきたものであります。京都と北京という変动帯の都市にあって、世界的な研究教育拠点である京都大学と北京大学の交流は、东アジア地域の文化に根ざす学问を、世界の人类に贡献するものとして発信していく原动力を生みだすものとなることでしょう。

京都大学文学研究科と北京大学人文系学部の间では、教员の行き来の长い歴史がありますが、组织的な交流协定は今回のものが初めてと闻いております。今回缔结された协定では、教员のみでなく大学院学生の相互交换留学もうたわれているということで、本学の中国史、东アジア研究などをさらに飞跃させる基础となるものであると同时に、日中间に幅広い文化交流の基础をつくる先駆的役割を担うものと期待されます。
さらに、この协定を契机として、近い将来、幅広い分野に交流の机会が生まれていくことも私は期待しております。
本日も、北京大学からは、歴史学部の張 希清先生のご挨拶をいただき、特別議題「グローバル化と日中のゆくえ」の中では、歴史学部長牛 大勇先生の「米中関係の過去と未来-日本とのかかわりのなかで」というご講演をいただき、ほかにも多くの方々のご参加を得ています。北京大学と京都大学の、世界の第一線に立つ研究者たちの活発な議論によって、今後の両国の交流の促進と、学問の発展のもととなる実り豊かな成果が得られることを願って、開会にあたっての私の挨拶といたします。
ありがとうございました。