尾池 和夫

京都大学に、奈良工业高等専门学校に、舞鹤工业高等専门学校に、それぞれ新しく採用された36名の方々に、研修の开讲式にあたって、ご挨拶申し上げます。
ちょうど新しい年度の始まりを祝うように、ソメイヨシノが咲き始めました。哲学の道と呼ばれる疏水に沿って咲く桜并木は、桥本関雪とその妻ヨネが京都市に寄赠した桜360本に、京都市が180本を足して合计540本の桜并木にしたと言われます。今でもその半数ほどが残っていて、関雪桜(かんせつざくら)と呼ばれます。
京都大学のキャンパスにも、たくさんの种类の桜がありますが、とくに北部构内の植物园の桜はきれいです。京都大学には桜の他にもよく知られた树木があります。京都市は、「区民の夸りの木」というのを选んでいますが、その左京区编には、熊野寮のイチョウ(高さ14.0尘、干周1.45尘)とクスノキ(高さ15.0尘、干周2.00尘)、时计台前のクスノキ、グラウンドのクスノキとメタセコイアが指定されています。また、北部グラウンドの西北の角にはオリンピック?オークがあります。この今週の研修の机会に、桜や名木を见ながら、京都大学の近くを歩いてみるのもいいのではないかと思います。
みなさんは日本の高等教育を担う职员として、自ら志愿して得た职场での活跃を梦に描き、希望に燃えていることでしょう。皆さんが参加する职场には、事务系の职场、図书系の职场、技术の职场、研究の现场である教室や施设の职场と、大学や工业高等専门学校の実に多様な教育と研究の场に即して、さまざまな仕事场があります。
高等教育の特徴は、もちろんその高度の専门性にあります。そして多様な学生を育てていく役割があります。みなさんの职场は、そのような学生がいて、教员がいて、それらの活动を支援する职员たちがいる、そういう职场であります。どの部屋を见ても、そこには世界の第一线を走る先端研究が行われている所があったり、それを継続的に支えるために24时间稼働している现场があったり、実に多様な仕事场を见ることができるでしょう。まずは、皆さんが仕事をする职场の身の回りから、多様な仕事の内容を、少しでも理解することを心がけてほしいと思います。そして皆さんご自身も、これだけは他の人に负けないという、得意技をぜひ身につけていただきたいと思います。

大学や工业高等専门学校で最も大切なのは、もちろん学生です。そのことをまず、しっかりと覚えてください。今日の皆さんに负けない意欲を持って入学してきた新入生たちが今キャンパスにあふれていて、勉学の意欲に燃えています。その学生たちの意欲をいつまでも持たせるのは、教员と职员の仕事の仕方にかかっています。学生は讲义を聴きますが、なかなか教员たちと直接话す机会が持てません。しかし、窓口の职员とは直接话をする机会がたくさんあります。そのときの対応の印象が、その学生の、その教育机関に対する印象になって一生残るのだということも覚えておいてほしいと思います。そして学生たちの颜と名前をたくさん知っている职员になってほしいと思います。
仕事をするときに、私自身がモットーとしている叁原则を皆さんにも参考にしていただければと思います。それは、まずは、自分の力を养うための「叁现力」です。それは「発现力、表现力、体现力」です。発现とは、自然治癒力の発现、免疫力の発现というように使う言叶で、持っている力を発挥する力です。潜在力は活用しなければもったいないのです。発想を生み出す力でもあります。また、表现力とは、広辞苑によれば、「心的状态?过程または性格?志向?意味など総じて精神的?主体的なものを、外面的?感性的形象として表すこと」です。思いついたことを人に伝えなければなりません。そして、体现力です。产学连携の体现者、ドラマで内面を体现する、というように使う言叶です。理想や思想を具体的な形に実现することです。実现力と言ってもいいでしょう。これらの「叁现力」をそろえて、自らの能力を最大限に発挥してほしいと思います。

つぎに、仕事を进めるための「叁现则」です。それは「现象、现场、现実」を大切にするということです。仕事をするためにはものごとを现象としてしっかり见ることが大切です。それも现场に行って见ることが大事です。そして现実を见ることも大事です。そのとき最も重要なことは、见た内容をしっかり记録しておくということです。そのようにして得た情报を基にして仕事を进めていくと、それが他からは得られない自分だけの得がたい情报源となります。
もし、行き詰まったときには、解决への叁原则があります。それは「原点、原物、原理」であります。原点は场合によって原典と置き换えます。物事の原点に帰って考え、あるいは书物の场合は原典を読み直すということです。そして原物をよく见て、原理をもとに判断するということです。そうすることによって解决への方向が见えてくると思います。
このような私の使っている叁原则あるいは叁现则を、参考にして、职场の现场に出て、何がそこに起こっているかという现象をよく観察し、现実に触れてみてください。そして、具体的なテーマを设定して、例えば、百万遍の角にある櫓や小屋は、いったい何のために谁が作ったのか、というような疑问から、京都大学の石垣にはどのような歴史があるか、不法占拠とは、学生とは、教职员の役割とは、大学や学部の自治能力とは、というように、次つぎと疑问を展开してみましょう。そして、问题は何か、どのようにそれを解决するかを考えてみてください。そして考えがまとまれば、それを提案していただきたいと思います。
职场には、皆さんの先辈がたくさんいます。その先辈たちをつかまえて质问し、提案し、议论してください。京都大学は、1年前までは国家公务员の职场でした。そこで长い间に身につけた公务员型の仕事场の习惯は、さまざまの点での改革を必要としています。
日本は、世界的に见ても强力な官僚社会であり、その歴史の强い影响を受けながら、急激な法人化をした职场に、新しい方针で新しく採用された皆さんですが、その皆さんには、すでに同じように新しい方针で採用された直近の先辈たちがいます。若い职员たちは、自分たちで学习会などを持ちながら研钻につとめ、たいへんな意欲を持って活跃しています。职场には、长い年月で培われた知恵も重要であり、若い意気込みも重要です。それらが融合したとき、皆さんの职场は大きな力を発挥して、学生を育て、研究を进展させることになるのです。
健康に十分気をつけながら、ご活跃くださるよう、心から愿っております。
ありがとうございました。