尾池 和夫

みなさん、明けましておめでとうございます。
今年の初诣は、茨城県鹿岛の鹿岛神宫へ行ってきました。境内の要石が、しっかりと鯰の头を押さえているかを确认するのが目的でありました。
京都大学の基本理念には、地球社会の调和ある共存に贡献するということばがあります。私にとって自然と人のことを考える年末年始でした。地球科学の研究者にとっては、地球に大きな现象が起こるたびに「なるほど」と教えられることばかりです。思いもよらないというような现象はあまり起こることはありません。しかし、世界の多くの市民にとっては、思いもよらない现象が起こるのです。そこに科学者と市民の知识の大きな差があります。

地球のことを知るのは大学での研究であり、市民に知识を伝えるのは教育です。研究は进んでいても、その成果が市民に伝わらなければなりません。
大学で仕事する研究者自身の着作活动、讲演会やテレビ番组企画への协力なども重要なことであると思います。ただ、市民にわかりやすく话をするということは、かなり训练をしないとたやすくできることではありません。
大学が行う組織的なものとしては、広报活动への定常的な財政的、人的投資が必要であります。ホームページや広報誌などでの情報の発信もあり、講演会や展示会、博物館など、市民に開放された場を通じて行う活動もあります。
京都大学ではシニアキャンパスという名で、社会人をキャンパスの中に受け入れてみたり、高校生のためのオープンキャンパスや体験授业、出前讲义などを试みてきました。また本年は、オープンコースウェアと呼んで、京都大学の讲义を世界の人に公开することを考えています。また、ジュニアキャンパスと呼んで、中学生に学问をきちんと讲义するという计画も持っています。今日は元教员の先生方がたくさんお见えになっておられます。このような活动の中で、元教员であった方々にもぜひご协力をお愿いしたいと思います。

自然に対して人工の典型は法律であると思います。自然の现象は纳得できるのですが、法律はなかなか分からないことがあります。昨年、もっとも私が分からなかったのは国立大学法人法という法律でした。国会审议で多くの付帯决议もあったのですが、始まってみると毎年予算が减らされるし、病院の経费は2パーセントずつ减らされる。それで第1期の间は动かさないと言っていたと思うと、今度は、さらに一番の大きな难问が、平成17年度の予算编成の结果であります。この中で、政府は、授业料の标準额を改订するとしました。改订とはすなわち値上げであります。
私はかねてより、授业料を下げるよう改订する提案をするのが文部科学省の役目であると述べてきました。今回の改订は决して容认できることではないと、国大协でも意思表示しました。世界的に见ても飞び抜けて高い授业料で、家庭の教育费の负担が大きく、少子化を招いています。学生たちが安心して学习に励むことのできる环境を守るために、皆様方のご协力をお愿いしたいと思います。
难问がいろいろありますが、ともあれ、新しい年が、皆様方にとって、よい年であることを愿って、年始の私の挨拶といたします。ありがとうございました。