第1回京都大学理学研究科21世纪颁翱贰シンポジウムの开催にあたって、5つの颁翱贰プログラムのスタートを祝い、京都大学を代表して挨拶申し上げます。
「理学を志す君たちに语る、21世纪理学研究の将来像」と题されているこのシンポジウムは、その文字の通り、理学を志す若い方たちに向かって、现在、わが京都大学で世界の先端を走っている、理学の各分野の第1线の研究者たちが、その梦を语る企画であります。
理学研究科长の笹尾先生が、夸らしくいわれるように、本日の第1回のシンポジウムで语られる5つの分野は、京都大学理学研究科の持つ5つの専攻の一つひとつに対応する分野であり、5つの専攻のすべてが、文部科学省による21世纪颁翱贰プログラムの研究拠点として选定されているということが、理学研究科のみならず、この京都大学の夸りでもあります。
この21世纪颁翱贰プログラムは、日本の大学の研究と教育の水準を高め、国际的な竞争力を一段と强化することを目的として、大学を支援する事业といわれています。大学からの申请をもとに、21世纪颁翱贰プログラム委员会の评価によって、研究のポテンシャルが高い水準にあるという観点から选定され、採択されたものです。
京都大学の场合には、平成14年度、2002年度には、募集された生命科学、化学?材料科学、情报?电気?电子、人文科学、学际?复合?新领域、の5分野のすべてに対して申请し、11件が採択されました。
また平成15年度、2003年度には、5分野、すなわち、医学系、数学?物理学?地球科学、机械?土木?建筑その他工学、社会科学、学际?复合?新领域の募集に対して申请をして、11件が採択されました。14年度と15年度あわせて22件の採択であり、现在京都大学としては、22の研究教育拠点の形成を目的として、これらのプログラムが走っているわけであります。
もとより理学は、あらゆる学问分野の基础となるものであり、本日绍介される理学研究科のプログラム以外の分野においても、当然ながら理学の歴史と蓄积が、その発展を支えているということができるのであります。とくに学际?复合?新领域の分野では、そのような発展の出発点にある分野が见られ、理学の分野からの具体的な展开の状况を见ることができます。
もちろん採択された分野のみならず、その周辺の分野においても、またそのほかの分野においても、同様に世界的な研究教育の拠点を目指して、京都大学では、3000人の教员と、2万2000人の学生たちが、日夜学问に励んでいることは、申し上げるまでもありません。この5分野に続いて、次の段阶には、また新しい分野が拠点としてスタートすることになるのを期待しており、本日のこの理学の5分野のシンポジウムが、京都大学のあらゆる分野の発展のきっかけとなることも、私は期待しております。
日本では、わが国独自の文化の长い歴史と蓄积をもとにして、欧米型の実証的科学の発展が、18世纪后半から始まりました。解剖学をはじめとして、西洋医学が移入され、杉田玄白らの「解体新书」ができました。この顷からの医学や物理学などを中心とする兰学塾が明治の科学教育に発展しました。
さらに、たとえば日本の自然の観察の基本となる地図に関しては、伊能忠敬が日本列岛の测量を始めたのは、1800年でありました。歩测で海岸に沿って距离を测って地図を完成し、リアス式海岸では纲を引いて、海を渡る距离を测りました。地球の外周を4万キロと计算しましたが、今知られている外周にくらべて、0.1パーセントの误差であったといわれ、その精密さには惊かされます。
また、1835年(天保6)年には、宇田川榕庵の近代植物学书「植学启原」が出版され、さらに1839年(天保10)年には、日本で初めての化学书である「舎密开宗(せいみかいそう)」が刊行されました。榕庵が訳した「细胞」「水素」「窒素」「酸素」などの訳语は、今もそのまま使われております。
1872年(明治5年)、文部省が出した学制には、小学校の算术、地学、理学、几何学、博物学、化学、天球学があり、中学校では、数学、地学、理学、几何学、代数学、博物学、化学、生理学、重学(ちょうがく:力学)、动物学、植物学、地质学、鉱山学、星学があげられました。それがやがて明治の末には、数学、地理学、博物学、物理学、化学に整理されました。そして1940年代の大きな改革を通して今の分野ができました。
京都大学の歴史の中では、1897年に京都大学の创设と同时に化学教室が设置されましたので、そのおかげで理学研究科も106年の歴史を夸ることができるのであります。
理学は多様な自然现象を人间の眼でとらえて、その本质を理解しようとする学问であります。その成果が、わたしたちの日常の生活に、すぐに役立つかどうかということではなく、わたしたちが自然をどれだけ理解することができるかということが大切であります。そのことが人类の次の世代に、知の遗产を伝えることになります。このような基础科学とその応用の分野が适切に配置されてこそ、人类の将来の幸せが保証されるのであります。
日本ではどちらかというと応用に重きが置かれて、基础研究が軽视される倾向が続いたことを反省する必要があるという意见があります。たとえば、理学部と工学部の规模を比べると、アメリカでは1対1、急速な発展を指向する中国でも1対4、それに対して、日本では1対8といわれます。もちろん理学と工学とを単纯に分けることはできません。たとえば、地球学と地球科学と地球工学という言叶があります。これらはそれぞれどう违うのだろうか、あるいはどのような関係にあるのだろうか。これからの理学と工学の、お互いに车の両轮となる発展のためにも、今日のシンポジウムを、このような観点からも注目していただきたいと思います。
また、理学の分野をすすめる手法として、理论科学の分野、実験科学の分野、それに野外科学の分野があり、それらが见事に融合しあって、研究を进めていくプロセスがあります。そのプロセスそのものが学问の醍醐味でもあり、これからの理学を志して本日参加して下さった若い方々には、その点もよく学んでほしいと思っています。
报道でご存じの通り、今日にも财务省の予算原案が内示され、24日には阁议决定が行われようとしています。国立大学法人への运営费交付金の取り扱いについて、効率化计数が适用された场合の大きな影响が悬念され、国立大学の予算が削减される可能性が悬念されています。そのようなことがないよう强く望むという要望书が、国立大学协会理事会からも、京都大学の各部局长からも、文部科学大臣、财务大臣に提出されています。そのような日本の将来に対する忧虑も、一方で持ちながら、とくに基础科学の分野の支援体制の重要性も考えつつ、今日のシンポジウムを注目していただきたいと思います。
本日は多くの方々のご参加をいただき、ありがとうございました。
(京都大学百周年時計台記念館 百周年記念ホールにて)