尾池 和夫
この国际シンポジウムのテーマは「多言语教育」と「自律学习」という二つの重要な言叶で表されています。京都大学はこの二つの言叶にたいへん深く関心を持っています。
多言语教育という面では、京都大学は日本の他の大学に比べて、学生がより多くの外国语を学习できる机会を用意しています。现在、学习できる外国语は、英语、ドイツ语、フランス语、中国语、ロシア语、イタリア语、スペイン语、朝鲜语、アラビア语の合计9か国语と、留学生向けの日本语とがあります。これらは全学共通科目として、いわゆる教养科目として开设されている外国语ですが、その他の形で开设されている外国语も加えるともっと多くの科目を开讲しています。しかも选択する外国语数の制限がありませんから、好きなだけ学习することができます。
自律学習という面でも大きな成果をあげています。CALL(Computer-Assisted Language Learning)を活用した外国語の自律学習の方式を、全国の大学に先駆けて実施し、今では学習のモデルと言われています。現在、年間1000名以上の学生が、この自律学習によって英語の単位を取得しています。英語以外の外国語についても、この自律学習を実施していく方針で教材開発を進めています。
「多言语教育」と「自律学习」は、京都大学の外国语教育の大きな2本の柱であり、京都大学の基本理念に基づいているものです。基本理念の「教育」のところには、「京都大学は、多様かつ调和のとれた教育体系のもと、対话を根干として自学自习を促し、卓越した知の継承と创造的精神の涵养につとめる」とあります。
大学レベルで外国语の自律学习を世界で初めて実施したのは、京都大学客员研究员でこの会场にいらっしゃるアンリ?オレック先生です。先生は自律学习の仕方を教えることが重要であると言われます。大部分の学生にとって大学は教育を受ける最终の教育机関ですが、学习は生涯続きますから、ここで自律学习能力をしっかり身につけておくことが必要です。
さらに基本理念には、「京都大学は、教养が豊かで人间性が高く责任を重んじ、地球社会の调和ある共存に寄与する、优れた研究者と高度の専门能力をもつ人材を育成する」とあります。「地球社会の调和ある共存に寄与する」ひとつの方法は、英语の以外の外国语も学习し、ことばの运用能力だけでなく、多极的世界観を身につけ、相手を理解することから始まると思います。英语以外の外国语を廃止したとか、英语の必修単位を极端に多くして他の外国语の単位を少なくした大学もありますが、私には賛成できません。その立场からも、今回のシンポジウムの开催趣旨はたいへん重要と思っています。
入学式の式辞で私は、「皆さんはぜひ、それぞれの母国语をまず大切にして、母国语による表现の技术をしっかり磨き、さらに国际语としての英语と、最低もう1か国语は学习するようにしてほしいと思います」と话しました。
母国語というのは、今のようにスピーチの最中でさえ、大脳の中でものを考えるときに使っている言語のことです。私たちは母国語で思索します。それによって自分の国の文化を育てます。わたしの専門は地震学ですが、東アジアの文化は変動帯の文化です。大地の動かない安定大陸の文化を育てたフランスやドイツの言語では、変動帯の文化を語ることが困難です。例えば、“一椀の葛湯をたのむ地震のひま”という大石 悦子さんの句があります。ここで地震を大和言葉で「なゐ」と読みますが、もともとのフランス語には地震という短い単語がなく、tremblement de terre と言います。
国际语というのは、今は英语であり数十年は英语であろうと思います。今、英语を使う世界の人びとの4人の内3人は英语を母国语としない人たちです。したがって私は英语を学习するとは言わずに、国际语を学习することを学生たちにすすめます。そしてさらにもう1つ外国语を学ぶようにすすめました。何よりも自国の文化をしっかりと身につけて、学习した言语でそれを语ってほしいと思っています。
今回の国际シンポジウムがきっと有意义なものになると思いつつ、私の挨拶といたします。多くの方々に参加していただき、本当にありがとうございます。ご成功を祈っております。
トピックス 国際シンポジウム「大学における外国語教育の二つの挑戦:多言語教育と自律学習」を開催