近年、近视の増加が世界的な问题となっています。近视は、远くのものがぼやけて见えるのみならず、緑内障や网膜剥离等の他の眼科疾患の危険因子となる事が知られています。このため、近视の発症を减らしたり进行を遅らせることが喫紧の课题となっており、昨年末には日本初の近视进行抑制点眼が薬事承认されました。
三宅正裕 医学研究科特定講師、亀井拓郎 同博士課程学生、辻川明孝 同教授、田村寛 国际高等教育院教授らの研究グループは、日本の小児における近視および強度近視の発症率とその経年的変化を明らかにするため、厚生労働省の管理するナショナルデータベース(NDB)を活用した大規模コホート研究を実施しました。その結果、2020年10月1日時点で小児(0?14歳)の近視有病率は36.8%であり、単位人口あたりの近視発症数は8歳で最も高いことが明らかになりました。また、単位人口あたりの近視発症数は10?14歳では経年的に減少し、逆に3?8歳においては経年的に増加しており、近視発症の若年化を如実に表した結果だと考えられます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の起きた2020年には8?11歳の子どもにおいて近視と診断される子どもが急増しており、コロナ禍におけるライフスタイルの変化が子どもの近視に大きな影響を与えていたことも示唆されました。
本研究は、日本における小児の近视の実态を明らかにするとともに、近视进行抑制のための政策介入の重要性を示唆するものです。
本研究成果は、2025年2月3日に、国際学術誌「Ophthalmology Science」にオンライン掲載されました。

通常、诊疗报酬请求データは、近视のような重篤性の低い疾患の疫学调査には不向きです。なぜなら、症状があっても医疗机関を受诊しない人が多いため、実态と乖离が生じる可能性があるからです。しかし本邦では、中学校までは义务教育であり、更には学校保健法により视力検诊が义务づけられているため、近视を持ち実际に见えづらさを感じている小中学生の多くは眼科受诊をしていると考えられます。つまり、小中学生においては、『近视を持っていても医疗机関を受诊しない人』が少なく、见逃しの可能性が低いのです。我々はこの点に着目し、狈顿叠を用いた子どもの近视の疫学研究を着想しました。
本研究により、子どもの近视の悉皆的な疫学情报が评価でき、近视の若年化、强度近视の増加、颁翱痴滨顿-19パンデミックによる近视の増加などをデータとして提示することができました。我々は他にも狈顿叠を用いた近视合併症の疫学研究を进めています。疫学は临床医学の基础ですので、これらのデータが、将来の近视の病态解明に繋がることを期待しています。」
【书誌情报】
Takuro Kamei, Masahiro Miyake, Ai Kido, Saori Wada, Shusuke Hiragi, Masayuki Hata, Masahiro Akada, Koji Niimi, Ken Ogino, Akio Oishi, Akihiro Nishida, Hiroshi Tamura, Akitaka Tsujikawa (2025). Annual Trend of Myopia and High Myopia in Children in Japan: a Nationwide Claims Database Study. Ophthalmology Science, 5, 4, 100729.
読売新聞(2025年3月5日 23面)に掲載されました。