点対称への変身が受容体によるホルモン認識の鍵! ―新規心不全治療薬へ向けた手がかりを提示―

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 小川治夫 薬学研究科准教授、児玉昌美 静岡県立大学助教は高輝度放射光施設SPring-8を利用したX線結晶解析により、「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の受容体NPR-Aのホルモン認識機構」を明らかにしました。心房から分泌されるANPは血圧や体液量の調節など生命の維持に不可欠な働きを担うホルモンで、NPR-AがANPを認識する機構の解明は医科学的に大きな意味を持ちます。

 これまで「点対称」に向き合った2分子の狈笔搁-础が1分子の础狈笔を结合することは明らかでしたが、础狈笔のアミノ酸配列には特に规则性は见出せず、「点対称」に配置した2分子の狈笔搁-础が対称的ではない础狈笔をどのように认识するかは未解明でした。研究グループは、狈笔搁-础と础狈笔の复合体构造を高分解能で决定し、结合した础狈笔が「拟似的に点対称」の形をとることで「点対称」に配置した2分子の狈笔搁-础へ认识されることを世界で初めて明らかにし、この疑问を解决しました。心不全のための新规创薬も期待され大変大きな成果です。

 本研究成果は、2024年3月4日に、国際学術誌「The FEBS Journal」にオンライン掲載されました。

点対称への変身が受容体によるホルモン認識の鍵! ―新規心不全治療薬へ向けた手がかりを提示―
図 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)がその受容体NPR-Aにより認識される機構
研究者のコメント

「本研究プロジェクトの開始は約14年前になります。さらりと記述した立体構造構築での工夫ですが、本手法を編み出すまでには血の出るような苦しみがありました。それが解析に時間がかかった所以です。解析には何度も挫折しましたが、対称を持たないANPが「点対称」に変身してNPR-Aに認識されるという大変シンプルな結論を得られたのは、研究者冥利に尽きます。本研究成果が急性心不全等に対する新たな治療薬の開発へ繋がることを確信しています。」(小川 治夫)

研究者情报
研究者名
小川 治夫
书誌情报

【顿翱滨】


【书誌情报】
Haruo Ogawa, Masami Kodama (2024). Structural insight into hormone
recognition by the natriuretic peptide receptor-A. The FEBS Journal.