成田拓仁 理学研究科博士課程学生、榎戸輝揚 同准教授(兼:理化学研究所チームリーダー)、Chin-Ping Hu 台湾国立彰化師範大学准教授らの研究グループは、銀河系内の強磁場の天体(マグネター)SGR 1935+2154をX線で高頻度に観測し、2022年10月14日に発生した高速電波バースト(Fast Radio Burst, FRB)の前後に、星の自転が急速に速くなるグリッチが2回起きたことを突き止めました。宇宙遠方で生じる高速電波バーストの発生機構を解明する上で重要な一歩となる発見です。
宇宙の远方から到来する谜の高速电波バーストは、2007年に発见が报告されてからいくつもの事象が検出されてきましたが、その放射源である天体や、その発生机构は现在まで明らかになっていません。2020年に银河系内のマグネターから高速电波バーストが齿线のバーストと同时に検出されたことで、マグネターは高速电波バーストを放射する天体の正体として、有力候补の一つになっていますが、その発生机构は未解明のままです。本研究グループは、2022年10月10日にこのマグネターが齿线放射の活动性を増した时期に、国际宇宙ステーションの齿线望远镜狈滨颁贰搁と齿线天文卫星狈耻厂罢础搁での高频度な追跡観测を行いました。その结果、齿线バースト放射を多数検出したことに加え、モニタリング観测の期间中の同月14日に高速电波バーストが発生し、それを时间的に挟むように2度にわたって天体に回転が急激に加わる双子のグリッチを発见しました。グリッチ间では自転が急激に减速していました。変动する宇宙をスクープした时间轴天文学の成果と言えます。
本研究成果は、2024年2月15日に、国际学术誌「狈补迟耻谤别」に掲载されました。

「高頻度な観測で大規模データが生み出され、その解析には先進的なアルゴリズム、迅速なデータ転送、十分な計算能力、そして緊密な国際協力が必須です。本研究で、マグネターや高速電波バーストの解明につながる有益な情報が得られ、将来の望遠鏡や観測戦略の策定のヒントにもなりました。」(Chin-Ping Hu)
「マグネターは重い星の爆発の后で形成される中性子星の一种と考えられていますが、その形成と爆発の関係は明らかになっていません。将来は爆発した星の残骸とマグネターを観测することで、その起源に迫っていきます。」(成田拓仁)
「今回の成果は、マグネターの活动期にかつてない高频度なモニタリング観测を迅速に実施できたことが键になりました。激変する宇宙を観测する时间轴天文学の分野では、こういった高频度観测は大切で、将来の宇宙望远镜や月面天文台で実现していきたいです。」(榎戸辉扬)
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【书誌情报】
Chin-Ping Hu, Takuto Narita, Teruaki Enoto, George Younes, Zorawar Wadiasingh, Matthew G. Baring, Wynn C. G. Ho, Sebastien Guillot, Paul S. Ray, Tolga Güver, Kaustubh Rajwade, Zaven Arzoumanian, Chryssa Kouveliotou, Alice K. Harding, Keith C. Gendreau (2024). Rapid spin changes around a magnetar fast radio burst. Nature, 626(7999), 500-504.
日刊工業新聞(2月16日 21面)、朝日新聞(2月19日夕刊 6面)および京都新聞(3月17日 8面)に掲載されました。