後藤龍太郎 フィールド科学教育研究センター助教、杉山高大 理学研究科博士課程学生、佐藤大義 琉球大学修士課程学生、中島広喜 同博士課程学生、石川裕 日本貝類学会会員らの研究グループは、琉球列島の加計呂麻島、沖縄島、伊計島、および紀伊半島南端の串本において、二枚貝の希少種ミドリユムシヤドリガイを発見し、報告しました。ミドリユムシヤドリガイは、海底生物のミドリユムシの体表の上で暮らす二枚貝類として1962年に熊本県の天草から新種として記載されましたが、その後、「和歌山県貝類目録I」を除けば確実な採集記録がなく、一時は絶滅したのではないかとも言われていました。しかし近年、愛媛県愛南町と鹿児島県南さつま市で再発見されるとともに、ほぼユムシ類の口吻の上だけに住むという奇妙な生態を持つことが明らかになりました(Goto & Ishikawa, 2019)。
本研究グループは、琉球列岛で初めて本种を発见しました。これまで本种は温帯域からしか见つかっておらず、亜热帯域からは初の报告となります。また、温帯域ではサビネミドリユムシ属のユムシ类を宿主として利用していますが、亜热帯域の琉球列岛では、一贯して大型のスジユムシ属の1种(希少种)を宿主として使うなど生态的な违いが见られました。形态的にも琉球列岛の集団はやや丸みが强いなど违いが见られましたが、ミトコンドリア遗伝子颁翱滨领域や核遗伝子滨罢厂2领域において、四国や和歌山の集団とは明瞭な遗伝的分化を示さないことから、同种と判断しました。本成果は、希少な贝类であるミドリユムシヤドリガイの分布や生态理解に贡献するものです。また纬度に沿った宿主利用の违いは、海洋の共生生物における宿主転换による种分化を考える上で兴味深い示唆を提供してくれます。
本研究成果は、2023年12月6日に、国際学術誌「Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom」にオンライン掲載されました。

「ミドリユムシヤドリガイは、生息场所も形态も极めて変わった珍种の二枚贝です。温帯の二枚贝と考えられていましたので、琉球列岛にも生息していることが分かったのは大変惊きです。また、採集では大学院生の皆様の活跃に感谢です。温帯と异なる宿主を利用しているのも兴味深いです。」(后藤龙太郎)
「かねてより后藤先生から、ユムシ类が採れた际は口吻に贝がいないか确认するように言われていました。本当にそんな贝がいるのか疑心暗鬼にもなりましたが、初発见时には大喜びで夜の干潟からご连络したことを覚えています。この発见がこの贝の保全や共生种の种分化への理解に繋がれば嬉しいです。」(佐藤大义)
【顿翱滨】
【书誌情报】
Ryutaro Goto, Taigi Sato, Hiroki Nakajima, Takahiro Sugiyama, Hiroshi Ishikawa (2023). Latitudinal shift of the associated hosts in Sagamiscintilla thalassemicola (Galeommatoidea: Galeommatidae), a rare ectosymbiotic bivalve that lives on the proboscis of echiuran worms. Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom, 103:e94.