菅大介 化学研究所准教授、鎌田太郎 同修士課程学生(研究当時)、島川祐一 同教授の研究グループと田中庸裕 工学研究科教授、細川三郎 京都工芸繊維大学准教授、湯村尚史 同教授は共同で、パラジウム(Pd)金属上で活性化された水素が0.6ミリメートル(600マイクロメートル)にも渡って酸化物表面を長距離拡散することを明らかにしました。
现在、水素社会の実现に向けて、水素の制御を可能にする现象の理解や材料の开発が极めて重要になっています。酸化物に担持された金属触媒上において生成した活性水素が酸化物表面上へと拡散する现象である水素スピルオーバーは、1964年に発见されて以来、様々な反応や物质开発に利用されてきました。しかしながら、水素はその軽さゆえに実験的に観测が难しいこともあって、水素スピルオーバーに関连する现象に対する理解は定性的なままであり、活性水素の拡散距离やその支配因子など、いまだ理解されていない点が多く残されていました。
研究グループでは、ペロブスカイト型鉄酸化物厂谤贵别翱x(虫~2.8)のエピタキシャル薄膜をモデル触媒担体として、水素スピルオーバーが触媒担体に与える影响を调べ、笔诲金属触媒から600マイクロメートルの広范囲において厂谤贵别翱x担体が还元されることを见出しました。この结果は、水素スピルオーバーによって生成された活性水素が担体表面上を长距离拡散し担体を还元したためと理解できます。さらに、厂谤贵别翱x担体表面における水素拡散では、贵别の価数が変化し、その际のエネルギー変化が265办闯/尘辞濒と非常に大きいことが、长距离表面拡散の起源であることも明らかにしました。本研究成果は、これまで难しいと考えられてきた「水素スピルオーバーの制御」に向けた重要な情报であり、さらには活性水素の新しい利用法の开発につながる可能性があります。
本研究成果は、2023年1月10日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

【顿翱滨】
【书誌事项】
Taro Kamada, Taisei Ueda, Shuta Fukuura, Takashi Yumura, Saburo Hosokawa, Tsunehiro Tanaka, Daisuke Kan, and Yuichi Shimakawa (2023). Ultralong Distance Hydrogen Spillover Enabled by Valence Changes in a Metal Oxide Surface. Journal of the American Chemical Society, 145(3), 1631–1637.