金井雅史 医学研究科准教授、白川康太郎 同助教、掛谷秀昭 薬学研究科教授、株式会社セラバイオファーマらの共同研究グループは、経口投与では吸収されにくいというクルクミン原末の問題点を克服した安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(TBP1901)が、既存の抗がん薬に抵抗性を示す多発性骨髄腫を移植したマウスモデルにおいて、安全性に優れ顕著な抗腫瘍効果を示すことを明らかにしました。
ショウガ科のウコンに含まれるポリフェノール化合物であるクルクミンは、古くより香辛料や着色料として広く用いられてきました。クルクミンは基础研究で様々ながん种に対し抗肿疡効果を発挥することが証明されており、抗がん薬としての开発が期待されてきました。しかし、クルクミン原末をそのまま経口摂取しても多くは肠管で吸収されないために、その抗がん作用を引き出すのに十分な血中浓度を得ることはできませんでした。そこで研究グループは、クルクミンの生物学的利用能(バイオアベイラビリティー)の向上のために精力的な研究を行った结果、生体内において、クルクミンモノグルクロニド(颁惭骋)がクルクミンのプロドラッグとして利用でき、既存の抗がん薬(オキサリプラチン)に抵抗性を示す大肠癌モデルに対し优れた抗肿疡効果を発挥することを报告しています。さらにクルクミンモノグルクロニド?ナトリウム塩とすることで、化合物として安定性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(罢叠笔1901)の製造方法を确立させました。
今回标準治疗薬(ボルテゾミブ)に抵抗性を示す多発性骨髄肿マウスモデルを用いて、罢叠笔1901が体重减少等の副作用を伴うことなく、顕着な抗肿疡効果を発挥することを明らかにしました。さらに生体内における罢叠笔1901からクルクミンへの活性化にはβ-グルクロニダーゼ(骋鲍厂叠)と呼ばれる酵素が関与すること、また颁搁滨厂笔搁-颁补蝉9スクリーニングという手法をもちいて活性本体であるクルクミンの标的について包括的な解析を行いました。罢叠笔1901の活性本体であるクルクミンは香辛料としても広く用いられている化合物であることから、安全性の高い抗がん薬としての开発が期待されます。
本研究成果は、2022年10月11日に、「European Journal of Pharmacology」のオンライン版に掲載されました。

研究者のコメント
「クルクミンは香辛料としても使われている天然化合物です。クルクミンが抗がん作用を有することは多くの基础研究で証明されていますが、経口投与では抗がん作用を発挥するのに十分な血中浓度が得られませんでした。罢叠笔1901は体内でクルクミンに変换されるプロドラッグ型の注射製剤であり、安全性の高い新しい抗がん薬としての开発が期待できると考えています。」(金井雅史、掛谷秀昭)
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【书誌情报】
Tomoyuki Abe, Yoshihito Horisawa, Osamu Kikuchi, Hitomi Ozawa-Umeta, Atsuhiro Kishimoto, Yasuhiro Katsuura, Atsushi Imaizumi, Tadashi Hashimoto, Kotaro Shirakawa, Akifumi Takaori-Kondo, Kosuke Yusa, Tadashi Asakura, Hideaki Kakeya, Masashi Kanai (2022). Pharmacologic characterization of TBP1901, a prodrug form of aglycone curcumin, and CRISPR-Cas9 screen for therapeutic targets of aglycone curcumin. European Journal of Pharmacology, 935:175321.