山下高廣 理学研究科講師、酒井佳寿美 同研究員、池内大樹 同修士課程学生(研究当時)、藤藪千尋 同博士課程学生、今元泰 同准教授の研究グループは、軟体動物サメハダヒザラガイの光センサータンパク質がヒトの眼の光センサータンパク質と同じ特徴を持つことを明らかにし、ヒトとサメハダヒザラガイの光センサータンパク質が独立して同じように進化した「パラレルワールド」である可能性を見出しました。
ヒトを含む脊椎动物の视覚に関わる光センサータンパク质ロドプシンは、脊椎动物の先祖が持っていたと思われる光センサータンパク质に比べて、光を受けた后のシグナル伝达の効率(シグナル増幅効率)が高く、この性质は脊椎动物のロドプシンが进化の过程で新たに特别なアミノ酸残基を获得したことに由来すると考えられています。そして、この特别なアミノ酸残基を持つ光センサータンパク质は、脊椎动物以外に见つかっていませんでした。本研究では、软体动物のサメハダヒザラガイの1种が持つ青色光感受性タンパク质が、この特别なアミノ酸残基を持つものの、脊椎动物のロドプシンほどシグナル増幅効率を高めていないことを见出しました。この结果は、サメハダヒザラガイと脊椎动物の光センサータンパク质は、収敛进化によって特别なアミノ酸残基を获得したものの、サメハダヒザラガイとは异なり脊椎动物のみがさらに特殊な分子构造を获得しシグナル増幅効率を高め、これが脊椎动物の持つ感度のよい视覚机能の获得に贡献していると考えられました。
本研究成果は、2022年8月24日に、国際学術誌「Cellular and Molecular Life Sciences」にオンライン掲載されました。

脊椎动物の视覚を担うロドプシンのシグナル増幅効率の上昇をもたらした特别なアミノ酸残基(緑星)は、进化的に独立に软体动物のサメハダヒザラガイの光センサータンパク质も获得していた(緑星)。
研究者のコメント
「脊椎动物とは5亿年以上前に系统的に分かれた软体动物の中に、ヒトの光センサータンパク质と同じような进化を遂げようとしていたものがあったことはとても惊きでした。脊椎动物の祖先とサメハダヒザラガイの祖先が、どのような生息环境で光センサータンパク质を「パラレルワールド」的に変化させたのか、タイムトラベルで知ることができればイイですね。」(山下高广)
【顿翱滨】
【书誌情报】
Kazumi Sakai, Hiroki Ikeuchi, Chihiro Fujiyabu, Yasushi Imamoto, Takahiro Yamashita (2022). Convergent evolutionary counterion displacement of bilaterian opsins in ciliary cells. Cellular and Molecular Life Sciences, 79(9):493.