谷藤一樹 化学研究所助教、大木靖弘 同教授、Markus W. Ribbe カリフォルニア大学アーバイン校教授、Yilin Hu 同教授、R. David Britt カリフォルニア大学デービス校教授らの研究グループは、窒素還元酵素(ニトロゲナーゼ)の触媒活性中心となる金属-硫黄補酵素が、その生合成過程において亜硫酸イオン(SO32–)から硫黄(厂)原子を取り込む様子を明らかにしました。
窒素(狈)は生命活动に必须の元素であり、ニトロゲナーゼは大気窒素から生物が利用可能な窒素源を生み出すことで生态系を支えています。この酵素の触媒机能は惭-肠濒耻蝉迟别谤(または贵别惭辞肠辞)と呼ばれる贵别-惭辞-厂-颁からなる活性中心が担っていますが、その生合成过程は未だ明らかになっておらず、ニトロゲナーゼを人工利用する上での妨げとなっています。本研究では、惭-肠濒耻蝉迟别谤の生合成を担うあるタンパク质に着目し、その前駆体である贵别等価体(摆贵别8S9颁闭)が、タンパク质上で2つの摆贵别4S4闭クラスターから生成する过程を详しく调べました。すると、この过程では厂翱32–から厂原子の取り込みが起こり、さらにその厂原子が同族元素(厂别、罢别)によって置き换えられることが分かりました。これにより取り込まれた元素の选択的な観测に成功したほか、反応过程のシミュレーションによって一连のプロセスの进行を支持する结果も得ました。この成果は、ニトロゲナーゼが机能するために外部基质となる厂源が必要になることを示しており、生物による窒素固定を人工利用する上で重要な発见と言えます。
本研究成果は、2021年10月11日に、国際学術誌「Nature Chemistry」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究の模式図。窒素还元酵素の活性中心(右下)が合成される过程で亜硫酸イオン(厂翱32–)から硫黄(厂)を取り込む様子を表す。
【顿翱滨】
Kazuki Tanifuji, Andrew J. Jasniewski, David Villarreal, Martin T. Stiebritz, Chi Chung Lee, Jarett Wilcoxen, Yasuhiro Okhi, Ruchira Chatterjee, Isabel Bogacz, Junko Yano, Jan Kern, Britt Hedman, Keith O. Hodgson, R. David Britt, Yilin Hu, Markus W. Ribbe (2021). Tracing the incorporation of the “ninth sulfur” into the nitrogenase cofactor precursor with selenite and tellurite. Nature Chemistry, 13(12), 1228–1234.