北海道に生息するサンショウウオ2種のニッチ分化と生態学的関係を解明 -生態ニッチモデリングによる生息可能領域の推定-

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 チャン=ヴァン=ズン(Tran Van Dung)地球環境学舎修士課程学生、西川完途 地球環境学堂准教授の研究グループは、照井滋晴 NPO法人環境把握推進ネットワーク代表、野本和宏 釧路市立博物館学芸員と共同で、北海道に生息するキタサンショウウオ(Salamandrella keyserlingii)とエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の2种の分布、生态ニッチ、生态的分化を明らかにしました。

 本研究で扱った小型サンショウウオ类は、林床の落ち叶や倒木の下で暮らす隠栖的な动物であるため、非繁殖期以外には一般に発见が困难です。また生息地もパッチ状に分散していることも多いため、种の正确な分布范囲の特定が难しく、生态的特性の评価や保全地域の设定ができずに、基础研究や保全研究において着しい障害となっていました。

 このような状况を改善するため、本研究では生态的ニッチモデリングを用いることで、北海道に生息する2种のサンショウウオの生息范囲を推定することに成功しました。モデルによる解析の结果、キタサンショウウオの生息可能な地域は釧路湿原のごく限られた部分であったのに対し、エゾサンショウウオは北海道全域に及んでおり、现在の分布とよく适合していました。また、2种のサンショウウオの要求する环境的条件が大きく异なることも明らかになりました。さらに、それぞれの种の北海道内の分布が、いかにして现在の状态にいたったのか、その歴史的変迁も明らかにしました。これらの成果は、生息地管理や保护区设定といった絶灭危惧种キタサンショウウオの保护の一助となることが期待されます。

 本研究結果は、2020年11月21日に、国際学術誌「Ecological Research」のオンライン版に掲載されました。

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図:(左)キタサンショウウオ、(右)エゾサンショウウオ
研究者情报
研究者名
西川完途
书誌情报

【顿翱滨】

Dung Van Tran, Shigeharu Terui, Kazuhiro Nomoto, Kanto Nishikawa (2021). Ecological niche differentiation of two salamanders (Caudata: Hynobiidae) from Hokkaido Island, Japan. Ecological Research, 36(2), 281-292.