山崎曜 理学研究科博士後期課程学生、渡辺勝敏 同准教授、西田睦 東京大学大気海洋研究所名誉教授(現琉球大学副学長)、鈴木寿之 兵庫県立川西緑台高校教諭、向井貴彦 岐阜大学地域科学部准教授らの研究グループは、ヨシノボリというハゼ科の淡水魚の系統関係を日本産の全種について初めて解明し、その生活史の適応進化と大規模な種間交雑について明らかにしました。
本研究成果は、日本時間の5月19日に分子系統学の国際誌「Molecular Phylogenetics and Evolution(分子系統学と進化学)」誌の電子版に掲載されました。
研究者からのコメント
ヨシノボリは日本中の川にすむ身近な小さなハゼで、もともと色彩の多様な1种类のハゼとして认识されていました。50年余前に我々の研究室の大先辈によって、川で一生を过ごす种类が新种として报告されて以来、いまや少なくとも18种が日本に生息することがわかってきました。
今回、混沌状态にあったヨシノボリ类の系统関係を明らかにし、生活史の进化や种间交雑の歴史について大筋を明らかにすることができました。今后は、海外に分布する种も含めたこのグループ全体の多様化の歴史を明らかにし、淡水域への适応进化や种分化の具体的な机构についても追究していきたいと考えています。
- 世界で最も多様化した淡水性ハゼ类であるヨシノボリ类のうち、日本产の全18种の系统関係を初めて解明
- 川と海を回游するタイプの种から、淡水域で一生を过ごす种への进化が、少なくとも4回以上起きたと推定された。この淡水域への适応しやすさが、ヨシノボリ类の顕着な多様性を形作ってきた要因の一つであることを示唆
- 淡水性でも、特に河川に进出する场合には、卵の大きさが大幅に大型化し、止水域に进出した场合には卵が小型化したと推定
- ヨシノボリ类では约70~250万年前(更新世前期顷)に、日本产のほぼ全种を巻き込んだ、他の生物では类を见ない程の大规模な种间交雑が起きた可能性を示唆
概要
ヨシノボリ类はアジア地域に85种以上、国内では18种が知られ、最も种数が多い淡水性のハゼ科鱼类として知られています。しかしヨシノボリ类が示すこれほどまでの种多様性が、どのようにして生まれてきたのかはこれまで谜でした。
この谜を解明するため、分子系统解析を行うことで、日本产全种のヨシノボリ类の系统関係を初めて解明しました。その结果、彼らの淡水域への适応进化が种多様性の増加に贡献していると推察されました。具体的には、アユやサケのように川と海を回游する种から、コイのように淡水域で一生を过ごす种への进化が4回以上(国外の种を含めるとおそらくさらに多数回)、また淡水性の中でも、河川にすむ种から池にすむ种への进化が1回起きたと推定されました。また淡水性の种の中でも、河川で一生を暮らす种では、卵の大きさが大幅に大型化していました。これは孵化した子供が河川环境で生きていくための适応进化だと考えられます。一方、池や湖にすむ种では祖先种よりもさらに小さめの卵を产む进化も起こっています。
また惊くべきことに、约70~250万年前(更新世前期顷)に当时いたほぼ全种を巻き込む、大规模な种间交雑が起きていたことも推定されました。これほどの种数を巻き込んだ种间交雑は他の生物ではほとんど确认されておらず、非常に珍しい现象です。
日本产ヨシノボリ类の种多様性(写真:雄、铃木寿之撮影)と核顿狈础に基づく系统関係。回游性种から淡水性种への进化が4回以上生じたと推定された。
详しい研究内容について
最も多様な淡水性ハゼ科魚類、ヨシノボリ類の進化史を解明 -回遊魚の淡水域への適応進化と大規模な種間交雑-
书誌情报
[DOI]
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Yo Y. Yamasaki, Mutsumi Nishida, Toshiyuki Suzuki, Takahiko Mukai, Katsutoshi Watanabe
"Phylogeny, hybridization, and life history evolution of Rhinogobius gobies in Japan, inferred from multiple nuclear gene sequences"
Molecular Phylogenetics and Evolution 90 pp. 20–33 Available online 27 April 2015