ニホンザル初の社会的惯习を発见

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中川尚史 理学研究科准教授、西川真理 同教務補佐員、松原幹 中京大学非常勤講師、下岡ゆき子 帝京科学大学専任講師らの研究グループは、ニホンザルでは初めて、いわば挨拶行動の文化と呼べる社会的慣習がみられることを発見しました。

本研究成果は、シカゴ大学出版局発行の学術誌「Current Anthropology」(2015年2月発行予定)に掲載されました。

研究者からのコメント

左から西川教务补佐员、中川准教授

1948年12月に产声をあげた野生ニホンザルの研究には70年近い歴史があり、これまで北は下北半岛から南は屋久岛まで、さまざまな地域で调査が行われてきました。しかし、本研究で明らかにしたような社会的惯习が発见されたのは初めてのことです。同一の研究者による个体群间比较は、一见谁もがやっていそうですが、一つの调査地で十分なデータを収集するにも时间のかかる野生の中大型动物の行动研究では、意外とやられていないのが现状です。せっかく比较するからには、「违い」が见込まれるという情报が必要です。その情报が得られても、やはり自分の目で确かめてからデータを収集するのが贤明でしょう。こうしたプロセスを経て、この研究は完成しました。研究者间で密に情报交换をすることで、ニホンザルにおいてもまだまだ新しい行动、あるいは行动の个体群间変异を见つけ出すことができ、それをもとに新しい研究が诞生すると确信しています。

概要

これまでに観察された野生チンパンジーの文化的行动についてとりまとめられた论文「チンパンジーの文化」(1999年「ネイチャー」にて発表)によれば、文化的行动として取り上げられた39の行动のうち16は、オオアリ钓りやナッツ割のほか、シロアリ钓り、サファリアリ浸し钓り、棒によるシロアリ塚堀りや水藻すくいなど食物获得のための道具使用行动でした。さらに、求爱や威吓のためのディスプレーにそれぞれ叶や石を使う行动、体を清洁に保つため毛缮い中に捕えた寄生虫を叶の上に载せてつぶすリーフ?グルーミングなども含め、何らかの物体操作を伴う行动はなんと37に达しています。

では、われわれ人间の文化はどうでしょう。食物とは无関係で、物体操作も伴わない行动の文化、つまり物质文化という范畴ではくくれない実に多様な文化を持っています。もちろん人间以外の霊长类においても、社会行动の文化的変异が全く知られていないわけではありません。これまで、チンパンジーの対角毛缮いやソーシャル?スクラッチという社会行动に文化的変异が认められることは発见されているものの、人间以外の动物の文化研究にとって初期の担い手となったニホンザルでは明确な証拠は得られていませんでした。

ところが、本研究チームは宫城県金华山岛と鹿児岛県屋久岛のニホンザルがこれまで报告のなかった奇妙な行动をすることを発见しました。この行动は、主にはオトナメス同士が向き合って座り、互いの腕を相手の体に回して抱き合う行动で、唇を突き出し気味にしてリズミカルに小刻みに开闭する「リップスマック」という表情に、「グニュグニュグニュグニュ」と闻こえる「ガーニー」と呼ばれる音声が伴います。この抱拥行动は、いずれの地域でも、毛缮いの中断、闘争、あまり仲の良くない个体同士の接近直后など、个体间の紧张が高まった状况で起こり、その后は毛缮いに移行することから、紧张缓和の机能があると考えました。

しかし、抱拥の仕方には地域间で违いが认められました。一つめの违いは体の向きで、金华山では上述の対面だけですが(図左)、屋久岛では対面に加え、片方が他方の体侧から抱きつくことが多く(図右)、背中侧から抱きつくこともありました。そしてもう一つの违いは、金华山では抱き合った体を前后に大きく揺するのに対し、屋久岛では体を揺する代わりに相手の体を掴んでいる掌を开いたり闭じたりします。

以上のような抱拥の仕方の违い、あるいは抱拥行动の有无の地域差は、环境の违いや遗伝的な违いによっては説明できそうにないことから、たまたま特定の地域で特定の仕方の抱拥行动が始まり、それが社会的に伝达していった文化であろうと考えました。


写真左:金华山のニホンザルの対面抱拥、写真右:屋久岛のニホンザルの体侧抱拥

详しい研究内容について

ニホンザル初の社会的惯习を発见

书誌情报

[DOI]

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Naofumi Nakagawa, Miki Matsubara, Yukiko Shimooka, and Mari Nishikawa
"Embracing in a Wild Group of Yakushima Macaques (Macaca fuscata yakui) as an Example of Social Customs"
Current Anthropology Volume 56, Number 1, February 2015

掲载情报

  • 朝日新聞(2月11日 1面)、京都新聞(2月11日 26面)、産経新聞(2月11日 3面)、中日新聞(2月11日 1面)、日本経済新聞(2月11日 38面)、毎日新聞(2月11日 27面)および読売新聞(2月12日 35面)に掲載されました。