白川昌宏 工学研究科教授らの研究グループは、なぜユビキチンが細胞内で凝集体を形成し得るのか明らかにすべく、物理化学的および細胞生物学的解析を行いました。その結果、ユビキチンはポリマー(ポリユビキチン鎖)を形成することにより熱力学的に不安定化することを見出し、さらにアミロイド様線維を含む凝集体を形成することを明らかにしました。また、これらの凝集体形成は細胞内でも観察でき、形成したユビキチン含有凝集体はオートファジーと呼ばれる分解機構で除去されることも分かりました。
本研究成果は、2015年1月20日付の英国科学誌「Nature Communications」で公開されました。
研究者からのコメント
左から森本大智 工学研究科助教、白川教授
多くの神経変性疾患は弧発性疾患(谁しもなり得る疾患)であることが知られています。また、ユビキチンはあらゆる细胞?组织に存在し、ポリユビキチン锁も同様です。したがって、本研究で解明したポリユビキチン锁の凝集体形成は、あらゆる细胞、あらゆる组织で起こりうる现象であり、これらの知见が神経変性疾患の弧発性を説明する一つの材料となり得ると期待されます。
今后はポリユビキチン锁がどのように细胞内で凝集体を形成するのか、そしてこれらの凝集体形成が神経変性疾患の発症にどのように関与するのかについて解明していきたいと考えています。また、ポリユビキチン锁线维はどのような高次构造を形成しているか、原子レベルで解明したいと考えます。
概要
高齢化が深刻化する现代社会において、アルツハイマー病等の神経変性疾患は社会问题であり、発症机构解明と治疗法开発は急务です。しかし、病変所见で确认される脳内の异常タンパク质凝集体形成は発见以来100年间、その形成机构が未解明のままです。
加えて、これらの脳内凝集体の多くは共通して、ユビキチンを含むことが确认されています。ユビキチンは、细胞内タンパク质に锁状に共有结合し、その机能や寿命を制御する翻訳后修饰因子の一つですが、物理的?化学的に极めて安定なタンパク质として有名です。したがって、なぜユビキチンが细胞内で凝集体を形成するのか现在も解明されていません。
そこで、本研究グループは、なぜユビキチンが细胞内で凝集体を形成し得るのか明らかにすべく、物理化学的および细胞生物学的解析を行いました。
その结果、ユビキチンはポリマー(ポリユビキチン锁)を形成することにより热力学的に不安定化することを见出し、さらにアミロイド様线维を含む凝集体を形成することを明らかにしました。また、これらの凝集体形成は细胞内でも観察でき、形成したユビキチン含有凝集体はオートファジーと呼ばれる分解机构で除去されることも分かりました。これらの知见は、神経変性疾患の脳内ユビキチン凝集体形成を説明する一助となるだけではなく、国内外のユビキチン研究分野に新たなパラダイムシフトを起こし得ると考えます。
図:ポリユビキチン锁线维形成モデル
详しい研究内容について
书誌情报
[DOI]
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Daichi Morimoto, Erik Walinda, Harumi Fukada, Yu-Shin Sou, Shun Kageyama, Masaru Hoshino, Takashi Fujii, Hikaru Tsuchiya, Yasushi Saeki, Kyohei Arita, Mariko Ariyoshi, Hidehito Tochio, Kazuhiro Iwai, Keiichi Namba, Masaaki Komatsu, Keiji Tanaka & Masahiro Shirakawa
"The unexpected role of polyubiquitin chains in the formation of fibrillar aggregates"
Nature Communications 6, Article number: 6116 Published 20 January 2015