正高信男 霊長類研究所教授らの研究グループは、学業には困難がないものの、人とのやりとりが苦手な自閉症の小学生20名(平均年齢:9歳)を対象に、たくさんの顔の中から一人だけ特別な表情をしているものを探し出すという、「ウオーリーをさがせ」のような課題を行い、成績を定型発達の子どもと比較しました。その結果、定型発達児では、見つけ出す顔が怒り顔の場合、非常にすばやく見つけ出せるのに対し、自閉症の児童では、怒り顔でもすばやく見つけ出すことが困難なことが判明しました。
本研究成果は、英国の「Scientific Reports」誌に掲載されました。
研究者からのコメント
左から正高教授、磯村朋子 理学研究科学生
今回の研究成果から、自闭症の子どもが経験するコミュニケーションの困难の一因に、本知见が関係している可能性が示唆されます。また、幼少の子どもの障害の诊断、あるいは疗育の手段として応用が期待されます。
今后は、より小さな子どもでの研究と、生理指标を用いた计测を行う予定です。
概要
自闭症の子どもは、他人とコミュニケーションをとるのに困难があることは近年よく知られるようになってきています。その原因としては「他者の心情を理解することができない」といった高次な认识や推论に问题があると考えられてきました。
本研究グループは、そのようなアプローチとはまったく反対に、自闭症の子どもでは基本的な表情の読みとりが苦手であることが、他人とのスムーズな交渉を阻害しているのではないかと考え、今回の研究を行いました。
线画で描かれた颜をいくつも同时にコンピュータの画面に提示されます。そのうち一つだけが、特别な表情をしており、ほかは无表情です。子どもが行わなければならないのは、できるだけ素早く、その特别な表情をみつけだし、それに手で触れることです。表情としては二通りが用意されており、一つは柔和なもの、もう一つは怒り颜です。
このように、定型発达児と自闭症の子どもで、この二つの表情の颜を见つけ出すスピードを计测したところ、前者では怒り颜の时により素早くみつけだすことが判明しましたが、自闭症の子どもでは怒り颜で、特に成绩が向上することはありませんでした。怒り颜というのは、向けられた者にとっては、身の安全を胁かす信号なので、それに対し迅速に対処しようとすることは生物としてきわめて适応的な反応であり、その情报処理はほとんど意识下でなされるものと考えられます。ところが、自闭症の子どもでは、そういう表情を意识下でよみとり、状况ごとに対応を変化させる柔软性が乏しいことが判明しました。
図:「ウオーリーをさがせ」実験に用いた刺激の例。左では一人だけが怒り颜、右では一人だけが柔和な表情をしている。
详しい研究内容について
书誌情报
[DOI]
摆碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝闭
Tomoko Isomura, Hiroyasu Ito, Shino Ogawa & Nobuo Masataka
"Absence of Predispositional Attentional Sensitivity to Angry Faces in Children with Autism Spectrum Disorders"
Scientific Reports 4, Article number: 7525 Published 18 December 2014