チンパンジーと人间の子どもの描画の比较

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松沢哲郎 霊長類研究所教授、林美里 同助教、齋藤亜矢 中部学院大学准教授、竹下秀子 滋賀県立大学教授らの研究グループは、チンパンジーと人間のお絵かきの発達について比較したところ、チンパンジーも絵を描くのが好きですが、人間だけが想像をもとにした絵を描くことがわかりました。

本研究成果は、「Child Development」の電子版に掲載されることになりました。

研究者からのコメント

左から、松沢教授、齋藤 中部学院大学准教授、林助教

本研究から、チンパンジーの描画について深く知ることで、人间の描画の発达の特徴が见えてきました。いわゆる非定型と呼ばれる、障害をもったお子さんたちの描画についての研究が进み、理解が深まるでしょう。また、これまで言语や道具や家族について语られてきた人间の本性が、絵画?描画?お絵かきという分野にあることが明确に示されたと思います。

今后は、人间の子どもやチンパンジーの同属别种であるボノボとの比较研究に进みます。

概要

これまでの研究から、进化の隣人であるチンパンジーなどの类人猿がお絵かきをすることはわかっています。他の动物の例と违って、教え込むのではなく、自由にお絵かきをします。しかし彼らが描くのは「なぐりがき」とされていて、颜などの「何か」を表した絵(表象描画)を描いた例はありません。人间の子どもは、幼いうちは「なぐりがき」をしていますが、3歳ごろになると颜などの表象を描きはじめます。この过程にどのような発达的な変化がおこるのでしょうか。そして表象を描かないチンパンジーとの违いはどこにあるのでしょうか。

本研究では、それぞれのお絵かきの特徴を调べるために、二つの検査を新たに発案しました。人间の実験者がお手本として简単な形を描いてみせる模倣课题と、目などのパーツが段阶的に欠けた不完全な颜の线画にお絵かきする课题です。霊长类研究所のチンパンジーたちと、1歳から3歳の人间の子どもたちを対象として、同じ方法で検査しました。その结果、明瞭な违いがみられました。人间は、まだ描线をうまくコントロールできないうちから、足りないパーツを补って颜を完成させようとします。それとは対照的に、チンパンジーは、线をなぞるなど、细かい描线のコントロールができても、足りないパーツを补って颜を完成させることはなかったのです。

描线を「何か」に见立て、それに足りないものを补う。いわば想像力に関わる认知的な特性こそ、人间が进化の过程でとくに発达させた知性の一つであることが、この研究から示唆されました。それに対してチンパンジーは、すでに描かれたものに注目し、そこに描かれていないものに思いをはせることはないようです。その背景には、言语の获得との関わりが予想されます。

左の図は、轮郭をなぞったチンパンジーの絵(左)と「ない」部位を补って颜を描いた3歳2カ月の人间の絵(右)、右写真は、お絵かきするチンパンジー(パル、5歳)

详しい研究内容について

チンパンジーと人间の子どもの描画の比较

书誌情报

[DOI]

Aya Saito, Misato Hayashi, Hideko Takeshita and Tetsuro Matsuzawa
"The Origin of Representational Drawing: A Comparison of Human Children and Chimpanzees"
Child Development Article first published online: 6 NOV 2014

掲载情报

  • 朝日新聞(10月28日夕刊 9面)、京都新聞(10月28日 28面)、産経新聞(10月28日 28面)、中日新聞(10月28日 29面)、日本経済新聞(10月28日 38面)、毎日新聞(10月28日 27面)および読売新聞(10月28日 38面)に掲載されました。