2014年9月12日
友永雅己 霊長類研究所准教授、岸本健 聖心女子大学文学部准教授、安藤寿康 慶応義塾大学文学部教授、高知県立のいち動物公園の多々良成紀氏、山田信宏氏、小西克弥氏、木村夏子氏、鹿児島市平川動物公園の福守朗氏らの研究グループは、高知県立のいち動物公園のチンパンジー集団の2歳になった二卵性双生児のチンパンジー(男の子:ダイヤ、女の子:サクラ)に対して、ふたごの母親のサンゴや、母親以外のおとなたちがどのように関わるのかを検討しました。
その结果、ふたごそれぞれに対して、母亲以外のおとなによる世话行动が観察されました。こういった母亲以外のおとなによるふたごへの世话行动が、ふたごの母亲サンゴの育児负担を軽减し、ふたごの自然哺育の成功につながったものと考えられます。
研究者からのコメント
左から友永准教授、岸本 聖心女子大学准教授
本研究では、チンパンジーのふたごの子育てに母亲以外のおとなたちが関わっていることが确认されました。この研究は、ヒトでは频繁に见られる、母亲以外のおとなによる子育てがいかに生じてきたか、その进化的侧面を考察する上で重要と考えられます。
现在も観察は継続しており、母亲とふたごたちの関係やふたごと母亲以外のおとなたちとの関係が、ふたごたちの発达に伴い、どのように変化していくのかを検讨していくことを考えています。
概要
ヒトの场合、2人の子の世话を同时に行わねばならないふたごの子育ては、母亲に大きな育児负担を课します。ふたごの子育てに伴う大きな育児负担は母亲に强い育児ストレスを感じさせ、抑うつ状态に陥る母亲も少なくありません。また、こういったふたごの子育てに伴う育児ストレスが、虐待をはじめとする不适切な养育を引き起こすリスクファクターになることも知られています。母亲だけでなく、父亲や祖父母、地域のおとなたちといった、母亲以外のおとなたちがふたごの育児にかかわることで、ふたごの子育てに伴う母亲の育児负担を軽减することが、ふたごの健やかな育ちにつながります。
ヒトに最も近縁の种であるチンパンジーも、稀ではありますがふたごを出产することがあります。しかし、多くの场合、ふたごの一方、または両方は、成人に至るまでに死亡します。これは、母亲以外のおとなのチンパンジーが、ふたごの子育てに参加しないために母亲の育児负担が軽减されず、母亲がふたごを育てきれないからであると考えられます。これまで、チンパンジーにおいて、母亲以外のおとなが、自分の子以外の子の育児に関わることを示した研究はほとんどありません。
そこで本研究グループは、のいち动物公园のチンパンジー集団を2011年4月から2012年3月までの1年间観察し、2歳になった二卵性双生児のチンパンジーに対して、ふたごの母亲のサンゴや、母亲以外のおとなたちがどのように関わるのかを検讨しました。その结果、ふたごそれぞれに対して、母亲以外のおとなによる世话行动が観察され、特に女の子のサクラに対しては、ふたごたちとは血縁関係のないおとなの女性が「背中に乗せて移动する」といった世话行动を行っていました。
この结果は、(1)従来、子育ては母亲または血縁个体が行うというチンパンジーにおける常识に反し、チンパンジーにおいても、実子ではない、非血縁の子どもに対する世话行动が见られることを示し、(2)こういった母亲以外のおとなによるふたごへの世话行动が、ふたごの母亲サンゴの育児负担を軽减し、ふたごの自然哺育の成功につながった可能性を示した点で兴味深いものであるといえます。
ふたご(左:ダイヤ、右:サクラ)を抱く母亲サンゴ
撮影时、ふたごは5ヵ月齢(论文より)。写真提供:山田信宏(高知県立のいち动物公园)
详しい研究内容について
2歳のふたごチンパンジーに対して、母亲以外のおとなも世话行动
书誌情报
[DOI]
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Takeshi Kishimoto, Juko Ando, Seiki Tatara, Nobuhiro Yamada, Katsuya Konishi, Natsuko Kimura, Akira Fukumori & Masaki Tomonaga
"Alloparenting for chimpanzee twins"
Scientific Reports 4, Article number: 6306 Published 09 September 2014
掲载情报
- 京都新聞(9月19日夕刊 8面)、中日新聞(9月13日 28面)および読売新聞(9月15日 30面)に掲載されました。