革新的材料設計手法により超長寿命2次電池開発に成功 -多数の高精度計算データを活用して材料開発を大幅に加速-

ターゲット
公开日

2014年7月30日

田中功 工学研究科教授、田中勝久 同教授、藤田晃司 同准教授らのグループは、西島主明 株式会社シャープ研究開発本部主任研究員らのグループとの産学共同研究により、新規の材料設計手法により従来のリチウムイオン電池の寿命を6倍以上に達成できる材料開発に成功しました。この成果は蓄電池の寿命を大幅に延長するにとどまらず、多数の高精度な計算データを活用したマテリアルズ?インフォマティクス手法により、実際の材料開発が大幅に加速できることを実証したもので、この分野の先駆けとなる成果と位置付けることができます。

本研究成果は、英国の科学誌「Nature Communications」誌に8月1日に出版されました。

研究者からのコメント

左から田中勝久教授、田中功教授、西島 シャープ研究開発本部主任研究員、藤田准教授

多数の高精度な计算データを活用して、汎用的な材料合成実験と组み合わせることで、従来からの试行错误的な材料探索のプロセスを大幅に短缩することが期待されています。このマテリアルズ?インフォマティクスと呼ばれる分野は、ごく最近になって世界中で研究が开始していますが、今回の成果は、その先駆けとなる重要なもので、わが国の产学の材料研究の実力が如何なく発挥されました。

この手法は、さまざまな材料分野に适用できますので、今后は、データ科学、情报科学における最先端の成果を吸収することでさらに手法に磨きをかけ、材料开発研究を加速する実証例を积み上げたいと思います。また本研究で発见された超长寿命リチウムイオン电池は、电気自动车や再生可能エネルギーの蓄电などの大型机器に応用に适していますので、その技术开発も进めて行きます。

ポイント

  • 多数の高精度计算データを活用して材料のハイスループット?スクリーニングに成功
  • 计算による的确な物质设计に基づき、新合成手法でリチウム2次电池正极材料の精密な合成に成功
  • 电池特性実験の结果、超长寿命を実証。予测される电池寿命は、従来品の约6倍となる25000サイクルであり、これは毎日1回の充放电で70年に相当
  • 计算と実験を组み合わせた革新的手法は、効率的な材料探索に极めて有用と强い期待

概要

本研究の対象は、リチウムイオン二次电池の正极材料です。リチウムイオン二次电池は、携帯电话をはじめとするポータブル机器の电源として広く利用されており、电気自动车や再生可能エネルギーの蓄电など大型机器への応用研究も精力的に进められています。携帯电话の电池が数年程度のサイクル寿命で设计されているのに対し、大型机器では、毎日の充放电で少なくとも数十年というサイクル寿命が求められます。この要求に応えるためには新しい技术要素の开拓が必要であり、各国で研究开発にしのぎが削られています。

しかし、従来型の材料开発では、研究者の勘と経験に基づき试行错误的に多くの合成と评価の実験を繰り返して行なわざるを得なかったため、最适な化学组成の探索がボトルネックとなっていました。今回の研究では、量子力学の原理のみに基づいて原子构造や特性を予测することが可能な「第一原理计算」を数千种类という、多数かつ高精度に実施し、そのデータを活用してハイスループット?スクリーニングすることで、最适な化学组成を効率的に见つけ出す手法が开発されました。その结果、材料开発の効率が大幅に向上できました。

図:尝颈贵别笔翱4の原子の一部を他の元素で置换した场合の体积変化の计算结果の一例。上部の长方体の各面に记载されている原子は、尝颈の置换元素(赤)、贵别の置换元素(緑)、笔の置换元素(水色)を示しています。

详しい研究内容について

革新的材料設計手法により超長寿命2次電池開発に成功 -多数の高精度計算データを活用して材料開発を大幅に加速-

书誌情报

[DOI]

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Motoaki Nishijima, Takuya Ootani, Yuichi Kamimura, Toshitsugu Sueki, Shogo Esaki, Shunsuke Murai, Koji Fujita, Katsuhisa Tanaka, Koji Ohira, Yukinori Koyama & Isao Tanaka
"Accelerated discovery of cathode materials with prolonged cycle life for lithium-ion battery"
Nature Communications 5, Article number: 4553 Published 01 August 2014

掲载情报

  • 京都新聞(8月3日 28面)、日刊工業新聞(8月4日 18面)および日本経済新聞(8月5日 15面)に掲載されました。