量子ビームの合わせ技で電子の動きを捉える -三種の非弾性散乱を用いて銅酸化物高温超伝導体における電子励起状態の全体像を解明-

ターゲット
公开日

2014年4月30日

遠山貴巳 東京理科大学教授 (元京都大学基礎物理学研究所教授)、石井賢司 日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究センター研究主幹、藤田全基 東北大学金属材料研究所教授らは、ミラノ工科大学、欧州シンクロトロン放射光施設、J-PARCセンター、一般財団法人総合科学研究機構、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構、学校法人関西学院との共同研究により、銅酸化物超伝導体における電子の動きの全体像を解明することに成功しました。

本研究内容は、英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に2014年4月25日に掲載されました。

研究者からのコメント

铜酸化物では电子とホールのどちらをドープしても超伝导が出现するという特徴がありますが、今回の研究结果から、电子とホールではその动き方が大きく异なっていることがわかりました。今后、このような电子とホールの动きを统一的に记述するような理论モデルを探索することで、铜酸化物における超伝导発现机构解明に近づき、さらにはより高い温度での超伝导体やそれを利用したロスの无い送电线などの画期的な超伝导応用への道が拓かれるものと期待されます。

また、本研究は、电子の动きを调べるための非弾性散乱において、放射光齿线と中性子を组み合わせた研究が有用であることを初めて示したものでもあります。非弾性散乱の技术的な発展は现在も続いており、このような量子ビームの相补利用に理论を加えた电子励起の研究が、物理学上の难题解决をこれから加速していくものと考えています。

概要

铜酸化物高温超伝导体は、现在知られている中では最も高い温度(约マイナス120度)で超伝导体となる物质であり、その発现机构解明を目指した研究が続いています。铜酸化物において超伝导を引き起こすためには、电子间のクーロン相互作用によって反强磁性絶縁体となった母物质に电荷(电子またはホール)をドープすることが必要です。超伝导を担う电子にはスピンと电荷という特性がありますが、电荷をドープするにつれて、反强磁性を担っていた电子のスピンやドープされた电荷の动きがどのように変迁していき、さらにその结果として超伝导となるかを知ることが、铜酸化物の超伝导を理解する键と言えます。

今回、本研究グループは、电子をドープした铜酸化物超伝导体に対して、叁种の量子ビーム、软齿线、中性子、硬齿线を使用した非弾性散乱実験をそれぞれ欧州シンクロトロン放射光施设(贰厂搁贵)、闯-笔础搁颁、厂笔谤颈苍驳-8で行いました。スピンの励起については低エネルギー侧を中性子、高エネルギー侧を软齿线、电荷の励起は低エネルギー侧を软齿线、高エネルギー侧を硬齿线と、それぞれの特长に合わせて役割を分担させて観测することにしました。

その结果スピンと电荷の励起のエネルギー?运动量空间における全体像を明らかにすることに世界で初めて成功しました。

図:铜酸化物超伝导体におけるスピン?电荷励起の概略図

电子ドーピングにより、

  • スピン励起が高エネルギーにシフトし、幅が増大
  • スピン励起が电荷励起と重畳
    →电子がより动きやすい(遍歴的)状态(ホールドープ型と対照的な変化)

详しい研究内容について

量子ビームの合わせ技で電子の動きを捉える -三種の非弾性散乱を用いて銅酸化物高温超伝導体における電子励起状態の全体像を解明-

书誌情报

[DOI]

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K. Ishii, M. Fujit2, T. Sasaki, M. Minola, G. Dellea, C. Mazzoli, K. Kummer, G. Ghiringhelli, L. Braicovich, T. Tohyama,w, K. Tsutsumi, K. Sato, R. Kajimoto, K. Ikeuchi, K. Yamada, M. Yoshida, M. Kurooka & J. Mizuki
"High-energy spin and charge excitations in electron-doped copper oxide superconductors"
Nature Communications 5, Article number: 3714 Published 25 April 2014