2014年4月23日
花田政範 基礎物理学研究所特定准教授、伊敷吾郎 同特任助教、西村淳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所准教授、百武慶文 茨城大学理学部准教授らの共同研究グループは、ブラックホールで起こる力学現象を厳密に記述できる新理論を、コンピュータによって数値的に検証しました。
本研究成果が、2014年4月17日(米国东部时间)付の米国科学誌「厂肠颈别苍肠别」のオンライン版に掲载されました。
研究者からのコメント
この研究では、「ホログラム」を用いたブラックホールの新しい记述法に関するマルダセナの理论を検証しました。これまでの研究では、重力の量子力学的効果が无视できる状况下でさまざまな検証がなされてきましたが、今回の研究ではこれをさらに一歩进めて、重力の量子力学的効果を含めた検証に成功した点において、大きな意义があります。
今后、本研究をさらに発展させることにより、ブラックホールの蒸発に関连したさまざまな谜が解明できるものと期待されます。また、マルダセナの理论によるブラックホールの新しい记述法は、ブラックホールが时间的に変化していく状况にも适用できると期待され、この「情报丧失问题」の解明につながる可能性があります。
概要
ブラックホールは、一度中に落ち込むと光の速さをもってしても外に出られないという、宇宙空间にぽっかり开いた「黒い穴」です。これに対して1974年、英国のホーキング博士は、ブラックホールの周りで粒子と反粒子が対をなして生成したり消灭したりする微视的な効果を考虑することにより、ブラックホールが辐射を出しながらゆっくりと蒸発していくことを理论的に导きました。このことからホーキング博士は、ブラックホールが一定の「温度」を持った物体と见なせることを示しました。
一方で、このようなブラックホールの性质を、ブラックホールの内部から精密に理解することは、これまで困难と考えられてきました。それは、ブラックホールの中心に近づくにつれ、时空の曲がり具合が大きくなり、一般相対性理论に基づく重力の记述が破绽するためです。
この问题を解决する新しいアプローチとして、1997年米国プリンストン大学のマルダセナ教授は、ブラックホールの中心を含めて正しく重力を记述する理论を提唱しました。この理论によれば、ちょうどホログラムが立体図形の情报を平面上に记録できるのと同様に、ブラックホールのように曲がった时空で起こる力学现象を、平坦な时空上で精密に记述できます。
今回の研究では、マルダセナの理论を用いてブラックホールの质量と温度の関係をコンピュータで数値的に计算しました。さまざまな大きさのブラックホールに対して计算した结果が、従来の超弦理论に基づく重力の量子力学的な効果の近似计算(别の研究)の结果と一致することを确认しました。これまでの多くの検証は重力の量子力学的な効果が无视できる状况下で行われてきましたが、本研究の検証はそれらを越える结果を与えるものです。マルダセナの理论は、従来の超弦理论に基づく近似计算よりも适用范囲が広いと考えられ、本研究によって确立された数値的な手法をさらに発展させることにより、ブラックホールの蒸発に関连したさまざまな谜の解明につながるものと期待されます。