2014年4月4日
西田栄介 生命科学研究科教授、砂留一範 同博士研究員らの研究グループは、筋分化のマスター制御因子MyoDと脂肪分化のマスター制御因子PPARγが拮抗的に作用することにより、筋肉細胞と脂肪細胞両方の特徴を併せ持つハイブリッド細胞の生成を細胞自律的に抑制していることを見出しました。さらに、MyoDとPPARγは、それぞれ互いの分化プログラムを、エピジェネティックな制御を介した転写抑制とユビキチンプロテアソーム系を介したタンパク質分解という、異なるメカニズムを介して抑制していることを明らかにしました。
本研究成果は、米国科学誌「Molecular Cell」誌に掲載されました。
研究者からのコメント
西田教授
本研究において、私たちは筋分化と脂肪分化が互いに排他的に进行することによって细胞の个性を保持する仕组みを见出しました。
今後は、脂肪分化においてMyoDタンパク質が分解される仕組みについて、より詳細な解析を行っていきます。また、MyoDタンパク質の分解を抑制することによって、脂肪細胞を減少させ肥満を治療することができるか、肥満のモデルマウスなどを使って検討します。また、本研究で発見された分化の排他性が、MyoD とPPARγ以外のマスター制御因子間にも存在するか、存在するとすればその仕組みはどのようなものなのかを検討していきます。
概要
筋肉细胞と脂肪细胞は、同じ间叶系の细胞から派生する発生的に近縁の细胞ですが、全く异なる性质を持ちます。分化过程においてこれらの细胞の运命は排他的に决定され、それゆえそれぞれの个性は维持されています。しかしその仕组みについては、これまで明らかにされていませんでした。
筋分化と脂肪分化は、惭测辞顿と笔笔础搁γという二つのマスター制御因子によって、それぞれ制御されています。本研究において研究グループは、惭测辞顿と笔笔础搁γが拮抗的に作用することにより、筋肉细胞と脂肪细胞両方の特徴を併せ持つハイブリッド细胞の生成を、细胞自律的に抑制していることを见出しました。さらに惭测辞顿と笔笔础搁γは、それぞれ互いの分化プログラムを、エピジェネティックな制御を介した転写抑制とユビキチンプロテアソーム系を介したタンパク质分解という、异なるメカニズムを介して抑制していることを明らかにしました。
本研究は细胞の个性を维持するメカニズムに重要な知见を与えるものであり、肥満や、再生医疗などの治疗応用が期待されます。
详しい研究内容について
なぜ筋肉と脂肪のハイブリッド細胞はできないのか? 筋分化と脂肪分化が排他的に起こる仕組みの解明 -肥満、再生医療などの治療応用に期待-
书誌情报
[DOI]
Kazunori Sunadome, Toshiyasu Suzuki, Mai Usui, Yuhei Ashida, Eisuke Nishida
"Antagonism between the Master Regulators of Differentiation Ensures the Discreteness and Robustness of Cell Fates"
Molecular Cell 54, pp. 1–10, May 8, 2014
掲载情报
- 京都新聞(4月4日 23面)、産経新聞(4月4日 25面)および日刊工業新聞(4月4日 21面)に掲載されました。