辻冴月 理学研究科日本学術振興会特別研究員PD、渡辺勝敏 同准教授、芝田直樹 株式会社環境総合リサーチ(研究当時、現:タカラバイオ株式会社)、乾隆帝 福岡工業大学教授、中尾遼平 山口大学特命准教授、赤松良久 同教授らの研究グループは、環境水に含まれる生物由来のDNA(環境DNA)を分析するだけで、複数種の系統地理を同時に推定することができる新手法の開発に成功しました。
生物种内における遗伝的な地域性や系统分化は、种の分布や进化の过程を推测するための重要な手がかりです。しかし、この遗伝的な违いを调べる系统地理调査は多地点から対象种を多数个体捕获し、组织顿狈础を个别に分析する必要があるため、多大な労力や时间を要します。そこで本研究では、环境水に含まれる环境顿狈础から効率的に正确な系统地理情报を取得する手法の开発を试みました。最大の课题であった偽阳性配列(実験の途中で必ず生じる本来存在しない配列)の除去のための効果的なデータスクリーニング方法を考案、适用した结果、対象とした淡水鱼5种すべてについて、一般的な捕获调査と同様の地域分化パターン(遗伝的集団构造)の情报を得ることに成功しました。本手法は、これまでにない简便かつ効率的、非侵袭的な调査を実现し、系统地理研究を通じた生物多様性の理解に大きく贡献することが期待されます。
本研究成果は、2023年3月7日に、国際学術誌「Molecular Ecology Resources」にオンライン掲載されました。

「本研究の野外调査中は各地点で水を汲んでまわるだけのドライブなので、自身が系统地理を调べていることを忘れてしまうほどでした。しかし、解析が进むにつれ、各种の地域分化の状况がくっきりと浮かび上がってきたときはとても兴奋したのを覚えています。今后も、各地域で息づいてきた生物たちを遗伝子レベルで把握?保全することに贡献するとともに、それらの辿ってきた歴史を解明していくことを目指したいと思います。」(辻冴月)
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【书誌情报】
Satsuki Tsuji, Naoki Shibata, Ryutei Inui, Ryohei Nakao, Yoshihisa Akamatsu, Katsutoshi Watanabe (2023). Environmental DNA phylogeography: Successful reconstruction of phylogeographic patterns of multiple fish species from cups of water. Molecular Ecology Resources, 23(5), 1050-1065.