50テスラ超強磁場まで維持される2次元超伝導状態を発見 -相対論的効果により出現する新奇超伝導現象の解明-

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柳瀬陽一 理学研究科准教授と笠原裕一 同准教授は、岩佐義宏 東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター教授らと共同で、原子膜材料である二流化モリブデン(MoS 2 )の电気二重层トランジスタ(贰顿尝罢)构造において、惭辞厂 2 表面に诱起される原子1层分の厚さの极めて薄い2次元超伝导体が、层に平行な方向の磁场に対して极めて强い耐久性を示すことを発见しました。さらに、第一原理に基づく理论计算により、この超伝导体では超伝导电子対のスピンが层に対し垂直方向に固定されている、前例にない特殊な超伝导状态が実现していることを初めて実証しました。

本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Physics」のオンライン(2015年12月7日版)に掲載されました。

研究者からのコメント

本研究により、反転対称性が破れた原子层1层分の厚さの2次元超伝导体では、面に平行な外部磁场に対して极めて耐久性の高い特殊超伝导が実现されることが分かりました。今后、この原子层超伝导の特异な超伝导特性や电子対形成机构が明らかになることが见込まれます。本研究成果は、対称性が破れた2次元超伝导という新たな学术分野を切り开く础となるだけでなく、强磁场に対して极めて安定的な超伝导材料を开発する指针となることが期待されます。

概要

医疗现场で利用されている磁気共鸣イメージング装置(惭搁滨)や、交通?输送分野で活跃が期待されるリニアモーターカーなどは强磁场下で超伝导を利用しているため、この磁场の上限を向上させた强磁场下で安定な超伝导体をデザインし作製することは、学术的に中心的な课题の一つであり、かつ材料开発において世界的に急务となっています。この候补物质として原子层レベルまで薄くした2次元超伝导体が挙げられ、実际さまざまな形态の2次元超伝导の研究が世界中で盛んに行われています。

このたび、本研究グループは、原子膜材料の一种である层状物质?二硫化モリブデン(惭辞厂 2 )の高品质な単结晶を用いて、电界効果トランジスタの一种である贰顿尝罢构造を作製しました。测定の结果、极低温领域の1.5ケルビン(マイナス271.7度)において、原子层に平行方向の临界磁场(超伝导が维持できる磁场の最大値)は52テスラまで上昇することを発见しました。

また、この超伝导体では、超伝导电子対のスピンが、面直方向に强く固定されていることを突き止め、これが原因となって外部磁场に対して极めて强いことを明らかにしました。これは世界的にも前例にない特殊な超伝导状态が惭辞厂 2 薄膜で実现していることを示しています。


MoS 2 -贰顿尝罢における面内磁场下における临界磁场の温度依存性(左)と今回明らかにされた非従来型の超伝导电子対形成(右)

(左)最低温での临界磁场は50テスラを超え、従来の理论での限界値の4倍の大きさになっている。(右)超伝导电子対は、面内の対称性の破れに起因する约200テスラの内部磁场によって、层に垂直な方向に固定されているため、层に平行な方向の外部磁场を加えてもその超伝导状态が维持される。下の図は、波数空间での超伝导対形成の様子

详しい研究内容について

书誌情报

[DOI]

Yu Saito, Yasuharu Nakamura, Mohammad Saeed Bahramy, Yoshimitsu Kohama, Jianting Ye, Yuichi Kasahara, Yuji Nakagawa, Masaru Onga, Masashi Tokunaga, Tsutomu Nojima, Youichi Yanase and Yoshihiro Iwasa
"Superconductivity protected by spin–valley locking in ion-gated MoS2"
Nature Physics, Published online 07 December 2015