石井信 情報学研究科教授らのグループは、国際電気通信基礎技術研究所との共同研究で、迷路ゲームに取り組むときの脳活動から次に見えてくるシーンの予測を読み取ることに成功しました。
行动决定において予测は重要です。例えば、目的地まで移动しようとする际に、人は次に现れるシーンを予测しながら进んでいきます。本研究では、こうしたシーン予测が核磁気共鸣画像(蹿惭搁滨)による脳活动から読み取れることを见出しました。このことは、予测の脳内メカニズム解明に贡献するだけでなく、脳活动を活用した新たなコミュニケーションツールの开発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」誌(電子版)に掲載されました。
研究者からのコメント
本研究では、壁と通路しかないシンプルな迷路を用いました。より复雑なシーンやシーン以外へと対象を広げることで、多様な情报を脳活动から読み取る技术の足がかりになると期待しています。
本研究成果のポイント
- 実験参加者に迷路ゲームに取り组んでもらい、次に见えるシーンを予想しているときの脳活动から予想したシーン(シーン予测)を解読
- 前头叶内侧部、上头顶小叶は、実験参加者のシーン予测が客観的事実と违っていた场合にはその间违いを反映した応答を示すことが明らかに
- 予测とその间违いを読み取ることに成功した本成果は、言语化困难な情报を脳活动から読み取るコミュニケーションツールの开発などにより、生活の质(蚕翱尝)の向上に贡献することに期待
概要
これまでの研究から、どちらの方向に移动しようとしているかは、海马の场所细胞の活动で表されていることが知られていましたが、まだ见えていない次のシーンの予测についてはよくわかっていませんでした。本研究では、予测を担う脳の领域では、シーンを予测しているときに、予测シーンによって异なる活动パターンを示すと仮定しました。そこで、これまでに空间の认知に重要と考えられてきた脳领域を対象に、予测シーンによって活动パターンに违いがあるかを调べました。
実験参加者に、蹿惭搁滨装置の中で空间移动を伴うゲームに取り组んでもらい、脳活动を计测しました。结果、海马を含む脳领域ではなく、脳の前方中央と(前头叶内侧部)と头顶の上方(上头顶小叶)に位置する领域でシーン予测に特化して読み取ることができることが示されました。これらの领域では、実験参加者の予测が间违っているとき、迷路构造と合致した正解のシーンではなく、间违ったシーンに対応する脳活动パターンを示していました。このことは、客観的事実とは异なる、主観的な「思い込み」を読み取れたことを示しています。
さらに、脳活动から読み取った予测を迷路上に配置していくことで、実験参加者が记忆している地図の復元を行いました。脳活动から復元された地図は、実験に用いた3种类の地図のいずれでも7割以上のマスで実际の地図と同じ构造でした。読み取った地図は、シーン予测の正答率が高い実験参加者ほど実际の地図に近いものでした。つまり、実験参加者ごとのシーン予测の巧みさは、脳活动パターンのシーン间での违いの程度によって説明できることになります。

迷路ゲーム中の脳活动からシーン予测を読み取る。迷路ゲームは、壁(黒マス)と通路(白マス)からなる。现在位置(灰色叁角)からは周辺のマスの状态だけをワイヤーフレーム状のシーンとして见ることができる。移动方向を予告されたのちに、移动后に得られるシーンがどちらかを回答する。この时の脳活动を计测し、统计解析によって予测したシーンを読み取る。読み取れるのは移动后に见えてくる前方の叁つのマスの状态である。さまざまな位置での予测を読み取り、重ね合わせることで脳活动から地図を復元する。
详しい研究内容について
书誌情报
[DOI]
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Yumi Shikauchi & Shin Ishii
"Decoding the view expectation during learned maze navigation from human fronto-parietal network"
Scientific Reports 5, Article number: 17648, Published online: 03 December 2015
- 京都新聞(12月4日 25面)に掲載されました。