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京都大学メールマガジン Vol.23
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目次:
◆四川省の巨大地震 尾池和夫
◆お知らせ
◆大学の動き
◆研究成果
◆イベントのお知らせ
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◆ 四川省の巨大地震 尾池和夫
四川省の巨大地震は、活断层の再活动で起こった地震の中では、私の知る限り最大规模の地震である。
今回の四川省の地震は龍門山断層という大規模な断層系に沿って岩盤がずれを起こし、青海チベット高原の岩帯が四川盆地の上に向かって大きくのし上がるように動いて起こったものである。
インド大陸が北に向かって押してきてヒマラヤ山脈と青海チベット高原を隆起させ、その圧縮で東へはみだした高原の岩盤が四川盆地の上にのし上がっている。その力で押された岩盤が南に張り出し、スンダ列島でインド洋プレートと押し合っている。その押し合いの場所で2004年に超巨大地震があり、半島の岩盤が南へ動いた。それが契機になって今回の四川の巨大地震が起こった。私はそのような仮説のもとに今回の一連の現象を見ている。
静岡大学教授の林愛明さんが、14日に現地に入って、17日には現地からの第1報を活断層学会に寄せた。それによると、断層の南の部分に約100キロの地表地震断層を確認できたという。また北の部分にも200キロほどの地表地震断層が確実にあるようだということで、300キロ近くにわたって、地震を起こした岩盤のずれの跡が地表に現れた可能性が高い。また、地震を起こした岩盤のずれは6メートルに及ぶようである。
このような大規模のずれは、プレート境界に起こる巨大地震の場合に見られる。例えば、1944年の東南海地震、1946年の南海地震を合わせたような規模に相当する。新聞などでマグニチュードは7.8とか7.9という値が出ていたが、そのあと中国地震局は8.0に修正したようである。
この四川省の大地震が起こったのは、2008年5月12日、日本時刻の15時20分41秒である。つまりそのころから龍門山断層の地下で岩盤がずれ始め、1秒に2キロほどの速さで、ずれ破壊が北東方向へ拡がっていったのである。
その日、本間政雄さんが会長をつとめる国立大学マネージメント研究会の集まりが京都大学の時計台であり、そこで5分ほどの挨拶をして京都駅からのぞみ号に乗った。四川に大規模な地震が起こったという最初のニュースは、のぞみ号の掲示で見た。「中国四川省で大規模な地震」というNHKのニュースが、17時39分、「中国?四川省で大規模な地震、重慶で小学生4人死亡」という読売新聞ニュースが、12日19時40分であった。
13日には、東京でグローバルCOEのヒアリングが4件あった。14日になると「都江堰」の分水部分に亀裂というニュースが時事通信から伝わった。紀元前3世紀に作られた治水のための堰で、世界文化遺産に指定されている。
17日20時33分配信の時事通信が伝えた死者の数は、2万8881人になった。20日には、世界トップ拠点のヒアリングが東京で行われ、それに参加するために19日の役員懇談会を終了した後、夜のうちに東京に着いた。19日の毎日新聞のニュースも東京で見たが、そこでは「中国政府によると18日現在、地震による死者は3万2476人、負傷者は22万190人に上り、四川省だけで450万を超える人々が避難生活を強いられている」とあった。
東京都の往復の車中で情報を収集しながら、理事の方々には、学生とその家族の安否の確認をお願いし、万一被災者がいたときには支援策を用意しておくようお願いした。1976年の四川省の大地震の時に比べて、情報伝達技術の世界の変化を実感したが、現地に入っている林愛明さんの生の報告が、やはり待ち遠しい。
本震による各地の揺れの強さなどは、私はまだ調べる時間がないままであるが、最大で「震度11」と言われているようだ。中国大陸では震度階級は1から12の12段階で発表されることになっている。台湾は日本の気象庁が以前使っていた0から7の8段階である。中国の地震研究にくわしい石川有三さんたちの解説では、中国大陸の震度10は「自転車に乗っている人が倒れる」など、11は「壊滅。山崩れが多数」など、12は「地表面が激しく変形。山河が変貌する」というが、実際に震度12が発表されたことはない。
中国地震局の前身である中国国家地震局は、1970年代に地震予報に熱心に取り組み、たくさんの成功例を出していた。各省の地震局がその仕事の中心であった。四川省地震局でも、1976年8月に起こった大規模地震の前に、中期予報に基づいて大衆を組織し、「宏観異常現象」の発生から見事な直前予報を出して人々が避難していた。
今回の地震でも、さまざまの前兆現象が報告され始めている。私の手元にあるのは、ウェブサイト上の情報だけであるが、「大地震の数日前、四川に近い湖北省の恩施というところの池の8万トンの水が5時間でなくなった」とか、「湖北省荊門地区のニワトリは鶏かごに入りたくないために木の上に飛んだ」とか、「5月10日、四川省綿竹市西南鎮の檀木村に数十万匹のヒキガエルの大規模な移動があった」というような情報である。
重要なことは、このような宏観異常現象はかなり規模の大きな地震の直前に現れる現象であるということである。つまり大地が大規模地震の起こる前から、やがて起こる地震が大規模地震であるということを示しているということである。これをはっきり認識して、地震の直前予報の可能性があるという確信を持って、研究費を投入することが必要なのである。
最大規模の震災記録の多くが中国にある。とくに有名な過去の現象を列挙しておく。
1303年9月17日の山西、洪洞、趙城地震で、M8.0、死者20万人。
1556年1月23日の陝西省華県の地震、M8、死者83万人。
これが世界史上最大の震灾である。
1920年12月16日の海原地震、M8.5、死者22万人。
この地震は青海チベット高原が北东方向に进出した大规模地震で、その后10年ほどの间に、四川省、云南省、甘粛省、新彊ウイグル自治区と、大规模地震が连発した。
1976年7月28日の唐山地震、M7.8、死者24万2,000人。
これが20世纪で世界最大の震灾であった。その前の年の、1975年2月4日の海城地震、惭7.2、死者1,300人が、世界で始めて系统的に予知予报が出されて人々が避难できた地震だった。
1970年代を中心に行われた中国の地震予報の事業に関しては、現地での取材と中国の原資料からくわしく紹介したことがある。その最初の本『中国の地震予知』(NHKブックス)は、すでに絶版になっているが、京都大学の機関リポジトリに収録してある。
(2008年5月21日、のぞみ号の车中にて)
京都大学学术情报リポジトリ 尾池和夫着『中国の地震予知』
◆お知らせ
○京大広报各号を掲载しました
?633号(2008年4月)及び号外(2008年4月)摆入学式等闭
?号外(2008年4月)摆卒业式等闭
○京都大学では、大学を绍介するDVDを作成しました。
○研究評価指標ツール "Essential Science Indicators (ESI)"が利用できるようになりました
◆大学の动き◆
○iPS细胞研究成果の社会还元を図るための事业について
京都大学iPS细胞研究センター长山中伸弥教授をはじめとするiPS细胞研究の成果を社会に还元するためには、产业界への技术移転が不可欠であります。また、产业界への技术移転を促进するためには、大学における関连する知的财产の管理?活用体制の强化が极めて重要であるとともに、强固な知的财产リスクへの対応も大きな课题となっていました。
このため、京都大学は、これらの诸课题に柔软に対応するための方策を、株式会社大和証券グループ本社、株式会社叁井住友银行及び、エヌ?アイ?エフSMBCベンチャーズ株式会社の3社と鋭意検讨を重ねてきましたが、このたび、iPS细胞研究に係る発明の円滑かつ适切な管理?活用と、その事业化を通じた研究成果の社会还元?社会贡献を図ることについて合意に至りました。
○第1回汤川?朝永奨励赏授赏者を决定しました
◆研究成果◆
○微生物による高等植物アルカロイドの生产:ケシアルカロイドの微生物生产の可能性
佐藤文彦 生命科学研究科教授らの研究グループは、南 博道石川県立大学助教らの研究グループと共同で、イソキノリンアルカロイド生合成の重要な中間体であるレチクリンを簡単な基質であるドーパミンから試験管内において生産する方法を確立し、この研究成果が、米国科学誌「米国科学アカデミー紀要 (Proceeding of the National Academy of Sciences USA (PNAS))」 の電子版に掲載されました。
○ヒトチオレドキシン1を产生するレタスの共同开発に成功
奈良先端科学技术大学院大学の横田明穂教授らの研究グループと京都大学ウイルス研究所淀井淳司教授らの研究グループは、ストレス?炎症?アレルギーを抑制するタンパクにおける医薬健康产业への応用が期待される「ヒトチオレドキシン1」を产生するレタスの共同开発に成功し、平成20年3月26日开催の日本农芸化学会2008年度大会において発表しました。
○英国科学雑誌「Nature Genetics 5月号(ラット特集号)」にラットリソースプロジェクト(NBRP-Rat)の事業成果及び関連研究が掲載されました
京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設が中核機関(代表研究者:芹川忠夫)として行っている、ラットリソースプロジェクト(NBRP-Rat)に関連する3編の論文が英国科学雑誌Nature Genetics 5月号(ラット特集号)に掲載されました。
○高温超伝导体は强い磁场中では普通の金属に戻ることを発见
理学研究科の芝内孝禎 准教授、松田祐司教授らの研究グループは、IBMワトソン研究所および名古屋大学と共同で、高温超伝導体の最大の謎であった“奇妙な金属”の状態が磁場により消失することを発見し、この研究成果が、米国科学誌「米国科学アカデミー紀要(Proceeding of the National Academy of Sciences USA (PNAS))」誌5月12日-16日の週の電子版に掲載されることになりました。
○珪藻が明らかにするもう一つのタンパク质合成システムの进化
京都大学院農学研究科 左子芳彦 教授、神川龍馬 日本学術振興会特別研究員は筑波大学大学院生命環境科学研究科?計算科学研究センター 稲垣祐司准教授との共同研究で、タンパク質合成システム進化には遺伝子の細胞間移動(遺伝子の水平伝播)が大きく関わっていることを明らかにしました。
◆イベントのお知らせ◆
○企画展「京都大学野生动物研究センター设立记念写真展」
百周年時計台記念館 京大サロン
○京都大学春秋讲义
○第26回 こころの未来セミナー 鎌田東二 先生
○霊長類研究所?野生動物研究センター 連続講義 「人間とは何か」
○ごみゼロの日 (5.30) ギネス級 巨大バッグで 「すりーあーる」 PRします!
○霊長類学発祥60周年記念 平成20年度 京都大学霊長類研究所 京都公開講座 「フィールドからラボへ」
○グローバルCOE生物多様性?霊長類学ジュニア教室 この手でサワッテみよう霊長類の化石たち
○インクルーシブデザインワークショップ in 東京
○狈笔翱花山星空ネットワーク 第2回 讲演会を开催します
○教员免许状更新予备讲习「理科大好きな先生に変身する叁日间」
○教育学研究科附属臨床教育実践研究センター 公開講座 「象徴的生活―いのちの尊厳性―」
○京都大学未来フォーラム(第33回) 近畿における琵琶湖の価値
講師:滋賀県知事 嘉田 由紀子 氏
&驳迟;&驳迟;その他のイベント情报はこちらをご覧ください。
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